サイエンス誌の今年科学にもっとも重要な発展、業績を与えたものに贈られる「2020年 ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」は、“記録的な速さで開発およびテストされた、COVID-19に対するワクチン開発”が選ばれました。

今年は誰もが、新型コロナウイルス(COVID-19)による様々な予定外・想定外への対応に明け暮れた一年だったのではないでしょうか。サイエンス誌が毎年実施する、ブレークスルー・オブ・ザ・イヤーもまた例外ではなかったようです。

Scienceのニュース編集者 Jon Cohen氏が、

Never before have researchers so quickly developed so many experimental vaccines against the same foe.(要約:研究者が同じ敵に対して、これほど多くのワクチン実験を迅速に開発実施したことはかつてありませんでした。)

というように、従来の不活性ワクチンの開発には5年から10年を要するといわれ、米国立アレルギー感染症研究所所長のAnthony Fauci氏も2月の時点でワクチンの開発には6~8年かかるとコメントしていました。

しかし、その予想は良い方向に裏切られました。4月には5社が臨床試験をはじめ、11月にはそれぞれ約95%の有効性(インフルエンザワクチンの有効性が60%前後といわれる)を報告しました。現時点では、各社の報告による数値であり、安全性についても充分な検証をすべき段階ではありますが、従来にない驚くべき早さと有効性です。これを実現した技術が、「mRNAワクチン」といわれる技術でした。

mRNAワクチンは、細胞内の「mRNA(メッセンジャーRNA)」という遺伝物質を人工合成して得られる医薬品で、mRNAを使った一種の遺伝子治療といえるでしょう。従来の不活性ワクチン開発と違い、mRNAワクチンの開発にはウイルスの遺伝情報(塩基配列)さえ分れば開発が可能で、感染症を引き起こすリスクを冒して、実際のウイルスを入手する必要がないのが最大の利点です。

mRNAを医療に応用する研究は1990年ごろから始まったとされ、これまでの長きにわたる多くの方々の研究が、今回の新型コロナウイルスに対するワクチンの早期開発に繋がる成果となりました。

現時点で、新型コロナウイルスの感染拡大はまだおさまりをみせていませんが、サイエンスの力できっといまの事態を終息できると信じています。
2021年がより良い年になる事を祈りつつ、みなさまどうぞよいお年をお迎えください。