モズは動物食の鳥類で、捕らえた獲物をなわばり内の木々の枝先などに突き刺して「はやにえ」を作る。この、はやにえの機能は長年謎だった。
今回、大阪市立大学大学院理学研究科の西田有佑特任講師と、北海道大学大学院理学研究院の高木昌興教授は共同研究で、モズのはやにえの消費量に応じて繁殖期におけるオスの歌の質が高くなり、メスの獲得に影響を与える事を明らかにした。
餌をなわばり内に貯える「貯食行動」はモズのほか様々な動物でも見られるが、貯えた餌の消費がオスの性的な魅力を高める効果を持つことが世界で初めて実証されたのが本研究の成果だ。

この研究成果は、2019年5月1日に国際学術誌「Animal Behaviour」のオンライン版に掲載された。

古くから、モズの「はやにえ」は和歌にも歌われる程、里山の一風景としてポピュラーな存在だ。しかし、どういった生物学的な機能として、モズが「はやにえ(貯食行動)」を行うのか、長年謎だった。有力な仮説の一つに餌が少なくなる冬季を生き抜くための「冬の保存食説」がある。
今回の研究報告によると、「冬の保存食説」を検証する為、はやにえの生産時期と消費時期を調査した。すると、はやにえの消費量は1月が最も高く、同じように寒い2月の消費はわずかという結果となった。

はやにえの主な機能が冬の保存食ならば、1 月と同じくらい気温の低い2月にも、もっと多くのはやにえが消費されてもよいはずです。しかし、はやにえの消費量は1月がもっとも多く、2月ではわずかでした。よって、はやにえには冬の保存食以外の機能も備わっている可能性があると私たちは考えました。

そこで研究チームは、はやにえの消費が活発だった1月は、モズの繁殖が始まる時期の直前である事に着目、先行研究から栄養状態が良いオスは歌唱速度を早く歌う事ができ、早い方がメスに好まれる事が判明していた為、モズのオスは、はやにえを消費することで繁殖期の声の質(=歌唱速度)を高めているのではとの仮説を立て、検証をする事とした。
繁殖期の歌唱速度とはやにえの消費量との関係を調査したところ、はやにえの消費量が多かったオスほど歌唱速度が速い事が判明した。
次に、オスの縄張り内のはやにえを取り除いた「除去群」、通常消費するはやにえの三倍量相当の餌をあたえた「給餌群」、はやにえ数の操作をしない「対象群」を作り操作実験を行った。
各実験群のオスたちのメスの獲得成功率と時期を調査した結果、対照群と比較して「除去群」のオスはメス獲得に失敗しやすい一方で、「給餌群」のオスはメス獲得の成功率が高いのみならず、より早い時期にメスを獲得している事が分かった。

これらの研究結果により、モズのオスの「はやにえ」がメスの獲得で重要な歌の質を高めるための栄養食として機能していることをつきとめた。

貯食行動は生存に関わる自然選択によって進化したという解釈がこれまでの定説でした。モズにおいても、貯えたはやにえには「冬の保存食」としての機能はありましたが、さらに「歌の質を高める栄養食」としても機能していることを突き止めました。
貯えた餌の消費がオスの性的な魅力を高める効果をもつことが実証されたのは世界で初めてです。

今後の展望として

貯食する動物の多くで、オスとメスの貯食行動の特徴に性差が見られます。また、オスが求愛に用いる形質(歌や羽色、ダンスなど)の質は、その個体の栄養状態に応じて高くなる性質をもつことが知られています。よって、モズ以外の動物でも、貯えた餌が性的な魅力を高める効果をもつ可能性があり、貯食行動の進化はこれまで考えられていた以上に複雑であると考えられます。

としている。

なお、本研究は「バードリサーチ研究支援プロジェクト」の資金援助を得て実施された。