北海道大学大学院薬学研究院の市川 聡教授とデューク大学のシー・ヨン・リー准教授は、抗生物質に耐性がある菌にも効果が期待されるツニカマイシン類について、感染症への効果を維持しつつ、ヒトへの毒性を抑えた新しい化合物の合成に成功した。この研究結果は英国時間 2018 年 2 月 19 日(月)付けで Nature Structural & Molecular Biology(英国科学誌)に掲載された。

現在の医療機関で使用されている抗生物質は、バクテリア感染症の治療に非常に有効である反面、抗生物質の使用には抗生物質に耐性がある薬剤耐性菌の出現のリスクが伴っているのが現状だ。薬剤耐性菌の蔓延は地球規模の深刻な問題であり、耐性菌にも有効な新たな抗生物質の開発が急務となっている。

一方、古くから知られている天然物の抗生物質であるツニカマイシン類は、薬剤耐性菌にも有効だが、ツニカマイシンはヒトの GPT と呼ばれる酵素も阻害してしまい、ヒトに毒性を示すためこれまで抗生物質として用いることができなかった。

研究発表によると、今回リー准教授は、世界で初めて GPT とツニカマイシンとの複合体の結晶構造解析に成功、さらに市川教授は、この複合体構造に基づいた薬物設計(SBDD)(※1)により、 GPT には認識されない化合物を設計した。合成した化合物は,バクテリアへの効果を保持しつつ、ヒトへの毒性(GPT 阻害能力)が約 1/1000 に低下していることを明らかにした。本研究で解明された構造情報は、ツニカマイシンを基盤とした毒性の低い新しい抗生物質開発の指針となることが今回の成果だ。

体調を崩した時病院で薬を処方してもらうが、最近、抗生物質をなかなか処方してくれなくなってきていてる(意識が高い新しい病院ほど特にその傾向強い)。当人としては早く楽になりたいので抗生物質が処方されていないとがっかりするが、多少の体調不良ならば薬剤耐性菌のリスクを考え我慢して安静にするしかない。もし抗生物質が効かない世界となったら、それこそ風邪でも命を落とす中世時代に逆戻りという恐ろしい現実が待っているからだ。

そういった中で、今回の成果は非常に意義深い。薬剤耐性菌の出現から長年の課題解決に大きな進展が期待される。今後の研究に期待したい。

  • (注1)SBDD:
    Structure Based Drug Design のこと。タンパク質の結晶構造から得られる三次元の構造情報をもとにして,新たな薬剤分子を設計すること。