サイエンス誌は、今年科学にもっとも重要な発展、業績を与えたものとして、史上初の「中性子星の合体観測」を選定した。
この現象を検出したのは、アインシュタインが存在を予言していた「重力波」を、2016年に世界で初めてとらえたレーザー干渉計重力波天文台LIGO(これにより2017年にレイナー・ワイス博士、バリー・バリッシュ博士とキップ・ソーン博士がノーベル賞を受賞している)だ。

ニュース編集者のTim Appenzellerは、

観測者らは2つの中性子星の衝突から発生した重力波を検出しただけでなく、この事象をガンマ線から電波まで光の全波長において観測しました。このような激しい事象の全容を知ることができれば、天体物理学が一変することが期待され、そのことから本年の観測に明確に2017年ブレークスルー・オブ・ザ・イヤーが与えられました

としている。

LIGOによる度重なる観測成果は、従来の可視観測や不可視の電波観測に加え、「重力波による観測」という新たな観測手法を天文学者にもたらした点が意義深い。イタリアで新たに稼働をはじめた重力波検出器、改良VIRGOをはじめ、各国で感度を高めた次世代型の重力波観測ネットワークが構築されつつある(三点測量と同じで、複数箇所からの観測で位置や観測精度を高められるため)。日本も例外ではなく、スーパーカミオカンデと同じく旧神岡鉱山内地下にある大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)がある。KAGRAは大型化(計測器の前長3km)に加え、極低温化(20ケルビン)、地下深度(200m)など独自の方法によりノイズを低減、高感度な検出器をめざしている。

余談だが、「中性子星の合体」といった天体現象のイメージからSF映画の視覚効果のような、強力な重力波をイメージされる方もおられるかもしれない。しかし実際は遠距離より到達する超微弱なもので、(重力波による)空間の歪みは水素原子1つの大きさよりはるかに小さいといわれ、LIGOの検知は地上や宇宙の塵がおこすノイズから正しく微小な変化を捉える計測技術やデータ解析技術など研究者メンバーの技術と知識を結集した成果だ。

今回は天体起源の重力波観測だったが、宇宙の起源を探る「重力波」の観測も期待される。ビッグバン宇宙論だけでは説明しきれない諸問題を補完する佐藤勝彦教授らが提唱したインフレーション理論で予言される「原始重力波」だ。2014年3月に痕跡を検知したというニュースが世界を駆け巡ったが、残念ながら最終的な観測結果は天の川銀河の塵により生み出されたノイズであると発表された。
観測感度が向上している今、星間塵由来のノイズに埋もれている原始重力波の(痕跡の)検出も現実味を帯びてきた。宇宙の起源にまた一歩迫れるかもしれない「重力波観測」の今後に期待したい。

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