知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回学術著作物執筆における『謝辞を書く際のポイント』

今回は学術著作物を執筆する際の“イントロダクション”の書き方についてです。英語・日本語の論文に関わらず、イントロダクションは執筆した論文が最後までちゃんと読まれるかを左右する大事な部分です。あらためてイントロダクションの書き方についてご確認いただければ幸いです。

論文の構成要素 – イントロダクション

論文のイントロダクションは、本文の最初の部分であり、論文全体の内容を理解するために必要とされる予備知識を提供する部分です。個別のセクションに区切られる論文であれば、イントロダクションは「Introduction」という見出しの一つのセクションになることが一般的です。

イントロダクションが果たす主な役割には以下の項目があります。

  1. 論文の背景を示します。つまり、当研究が、どの分野に分類されるのか、そしてその分野においてどこに位置付けられるかを明確にします。
  2. 研究の動機を述べます。要するに、なぜこの研究を行う意味があるかを説明するのです。
  3. 研究の目標を示します。つまり、今回の研究でどのような進展を目指しているかを明らかにします。
  4. 研究法を簡潔に記述します。具体的には、目標を達成するためにどのような方法によって解を与えようとするかを概説します。
  5. 結果を簡潔に述べます。
  6. 結果の重要性を手短に論じます。特に、この結果が研究分野の進展にどのように貢献するかを明らかにします。

概して、これらの項目の記載順は上の通りになります。以下にそれぞれの役割について、もう少し細かく説明します。

i.論文の背景

論文の主題に関連する先行研究を要約し、当該研究分野の現状を記述します。そして、論文で報告される研究が、その分野においてどのような意味があるかを説明し、分野における研究の位置付けを明らかにします。こうした背景をどこまで詳細に記述するかは、ターゲット・オーディエンス(読者)によって異なります。論文が、専門分野に特化したジャーナルに掲載されるのであれば、その分野の知識を有する専門家に向けた説明で十分ですが、幅広い読者をターゲットにしたジャーナルであれば、背景をより細かく述べる必要があります。

ii.研究の動機付け

一般的に、研究の動機となることは該当する研究分野における未解決の問題を解決しようとすることです。その問題を指摘することによって、それぞれの研究の背景と研究の動機についてのディスカッションをつなぐことができます。問題を指摘してから、問題の解決が研究分野においていかに重要なのかを説明(アピール)します。

iii.研究の目標

研究分野における未解決問題を解くことが動機ではありますが、場合によってはその問題を完全に解決することが現実的に不可能なこともあります。その場合には、取りあえずの目標として動機付けとなっている問題の解決に向けて何らかの進展を目指すこともあります。動機付けとなる問題の解決を「大きな」目標とすれば、論文で目指すのはその目標への一歩となる「小さな」目標であることを明らかにします。この場合、特にその小さな目標に着目する理由も述べておくべきです。

iv.研究法

研究法についての本来の議論は「本論」で行うものですが、イントロダクションでもその要点を述べる必要があります。まず、研究が理論、実験、観測、数値計算、データ解析、調査、臨床試験などのいずれの手法で進められるのかを明らかにし、それから個々の手法において具体的にどのようなアプローチをとっているかを述べます。また、当研究におけるアプローチと従来のアプローチを比較し、従来法が不十分だったのに対し、当研究の手法が成功につながる方法である理由を説明します。アプローチの比較では、今回の研究法の特徴や独創性を強調すべきです。

v.結果

目標に対する結果を描写し、目標を達成したかどうかを明らかにします。また、その他の重要な結果を得た場合はそれも描写します。

vi.結果の重要性

結果の重要性についての議論は、主にコンクルージョンで行いますが、イントロダクションでもその核心を示しておくべきです。イントロダクションでは、目標とする結果を得ることが、知識を拡充・深化させるためにどのように役立つか、大きな目標の達成に向けどのように寄与するかを簡潔に説明すればよいでしょう。

上述のように、イントロダクションは論文の背景および目標を明確にするとともに、読者の関心を引き付ける役割も果たします。

*次回は「本論」の構成についてお伝えします。

◆今回のポイント
・イントロダクションの目的は論文全体の内容を理解するために必要とされる予備知識を提供すること
 ・論文の背景、研究の動機・目標・研究方法・結果や結果による研究分野への貢献について簡潔にまとめる事で、読者の論文に対する理解と関心を引き付ける役割をはたす
『論文の構成要素-“本論”』につづきます
Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm

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