知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回『英語における記述記号の基本 “引用符(クォーテーション)”(1)』はこちら

◎今回は、前回に引き続き「引用符(クォーテーション)」についての第2回です。

特定の定義

ある語句が特定の定義で用いられる場合、そのことを示すのにダブルクォーテーションを使います。以下はその用法の典型的な例です。

  1. Anisogomphus solitaris is categorized as “critically endangered” by the IUCN.

ここでのダブルクォーテーションは、「critically endangered」という表現がIUCNという団体によって特別に定義され、その定義で用いられているという意味を表します。

反語法

以下の文は、あえて「friend」という語を反語的に使用することで、強い皮肉の意を含んだ内容となっています。

  1. My “friend” John published my results without my consent.

このような場合でも、ダブルクォーテーションを用います。

作品のタイトル

あるまとまった作品(本、絵画、映画、交響曲、アルバムなど)のタイトルは、イタリック体にすることが標準的です。そのようなまとまった作品の一部(一作品)については、ダブルクォーテーションで示すのが慣例となっています。以下にその用例を示します(それぞれの文中のコンマの位置に注目してください)。

  1. [英] The poem “By the River”, appearing at the end, is generally regarded as the finest work in Sontel’s Unguarded Musings.
     (コンマの位置がダブルクォーテーションの外側:よりイギリス的)

    [米] The poem “By the River,” appearing at the end, is generally regarded as the finest work in Sontel’s Unguarded Musings.
     (コンマの位置がダブルクォーテーションの内側:よりアメリカ的)

引用

以下に引用の用法における引用符の典型的な用い方を例示します。アメリカ英語とイギリス英語で違いがあることに注目してください 。

  1. [英] When I asked him when he would come, Tom said, ‘when I’m ready’, but I’m not sure what he meant.
     (コンマの位置がシングルクォーテーションの外側:よりイギリス的)

    [米] When I asked him when he would come, Tom said, “when I’m ready,” but I’m not sure what he meant.
     (コンマの位置がダブルクォーテーションの内側:よりアメリカ的)

  2. [英]Smith characterized this entire body of work as being “wholly without merit”.
     (ピリオドの位置がダブルクォーテーションの外側:よりイギリス的)

    [米] Smith characterized this entire body of work as being “wholly without merit.”
     (ピリオドの位置がダブルクォーテーションの内側:よりアメリカ的)

  3. Although his statement was “You must not give up,” he certainly did.
     (両方)

ここで特に注目していただきたいのは(3)での用法です。この場合、引用文の原文がピリオドで終わるはずですが、ここではコンマになっています。これは前回の脚注で述べた、「使い方の一貫性」についてのルールの例外です。(3)によって示されるように、ここで優先されるルールは、引用文がある一つの文章の中に挿入されている場合は、引用文をピリオドで終わらせてはいけないということです。

詳しいことについては以下の参考書をご覧ください。
1. Burchfield, Robert William, Fowler’s Modern English Usage (Revised 3rd ed.), (Oxford University Press, 2004). ISBN 978-0-19-861021-2. OCLC 56767410.
2. University of Chicago, The Chicago Manual of Style (16th ed.), (Univ. of Chicago Press, 2010). ISBN-10: 0226104206.ISBN-13: 978-0226104201

◆今回のポイント
前回からの続き

用法5:特定の定義
・ある語句が特定の定義で用いられる場合:ダブルクォーテーション

用法6:反語法での用法
・反語法、その語句を強調する際に用いる

用法7:作品のタイトルでの用法
・本、絵画、映画、交響曲、アルバムなどのタイトルはイタリック体にすることが標準的
・そういったまとまった作品の一部(一作品)を表す場合:ダブルクォーテーション(慣例)
 ※ただし、英と米で用法が違う(コンマの位置など)

用法8:引用での用法
・引用する場合に用いる:ダブルクォーテーション
 ※英と米で用法が違う(コンマの位置など)
 ※ただし、引用文が、ある一つの文章の中に挿入されている場合は引用文をピリオドで終わらせてはいけない

『英語における句読点の基本 “ハイフン”(1)』につづきます
Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。
パケット先生のHPはこちらから科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm
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