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岡山大学惑星物質研究所の辻野典秀JSPS特別研究員(PD)、山崎大輔准教授と愛媛大学、神戸大学、公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)、東京工業大学の共同研究グループは、地球内部で最も多く存在するブリッジマナイト(※1)多結晶体のせん断変形による結晶選択配向(※2)を実験により解明、スラブ(沈み込んだプレート)近傍の地球下部マントル(※3)の流れ場を明らかにした。この研究結果は10月17日、英科学雑誌「Nature」のLetterとして公開された。

研究発表によると、研究グループは高圧実験技術の改良により、ブリッジマナイト多結晶体の大歪(だいひずみ)せん断変形実験に成功、変形したブリッジマナイト多結晶体の結晶選択配向を決定できたということだ。

東海地震を代表とするプレート境界型地震発生のメカニズムを解明する為にはプレートの沈み込みといった、マントルの動きの解明が重要となる。
これまでの観測で、地震波(S波)がスラブ周辺の下部マントルにおいて地震波速度の異方性がある事が判明していた。今回の研究では、マントルの多くを占めるといわれるブリッジマナイトの結晶選択配向を決定し、既に判明していたブリッジマナイト弾性定数と組み合わせる事で、地震波速度異方性がスラブに沿った変形によって説明できることを明示したのが今回の成果だ。
沈み込み帯に近接し地震国である我が国にとってマントルダイナミクスの解明は非常に重要だ。今後の研究に期待したい。

なお、この研究は研究は辻野典秀JSPS 特別研究員の東京工業大学での博士論文研究を発端とし、JSPS KAKENHI Grant Number 15J09669 によって支援された。

  • (注1)ブリッジマナイト:
    深さ 660 km-2900 km に広がる下部マントルの最主要鉱物(77 体積%)であると考えられている鉱物。主な組成は(Mg,Fe)SiO3 であり、結晶構造はペロブスカイト型構造。2014 年に国際鉱物学連合によりブリッジマナイトという名称が承認された。この名称は高圧物理学でノーベル物理学賞を受賞したパーシー・ブリッジマンに由来する。
  • (注2)結晶選択配向:
    鉱物の多結晶体の各粒子がランダムな方位を向いているのでなく、ある特定の方位を向いている状態。地球マントルでの結晶選択配向は主に、マントル対流(塑性変形)により発達すると考えられている。
  • (注3)マントル:
    地球型惑星では金属核の外側に広がる岩石層。地球において、大陸地域では地表下30-70 km から、海洋地域では海底面下約7 km から約2900 km の深さまでに広がっている。また、地震学的観測および鉱物学的検討から深さ410 km までを上部マントル、深さ410-660 km を遷移層、深さ660 km-2900 km を下部マントルと呼ぶ。