知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回『英語で混同しやすい用語や表現 “fartherとfurther”』はこちら

◎日本語に訳した時のニュアンスのズレによって、つい用法を誤ったという経験はないでしょうか。今回は「abbreviate」の間違いやすい用法についてご紹介します。

abbreviateの用法

日本人学者の論文において、動詞「abbreviate」が誤用されているのをしばしば目にします。最もよく見受けられる誤用は、「abbreviate」が「omit」や「delete」の意味を表すものとして用いられていることです。「abbreviate」にはこうした意味はありません

上述の誤用はおそらく、日本語の「省略する」の誤訳に起因するものでしょう。「省略する」は、「短くする」という意味で用いられている多くの場合には「abbreviate」に相当しますが、それ以外の意味だと「abbreviate」は誤訳とみなされます。特に、「省く」の同義語として使用される場合には、「省略する」は「abbreviate」ではなく、「omit」、「delete」、「remove」、「eliminate」、「drop」などに訳すべきです。このような意味を示すのに「abbreviate」は全く不適切と思われます。

以下は「abbreviate」の典型的な誤用を示します。

  1. [誤] From this point, we abbreviate the dependent variables and write g(x,y) simply as g.
    [正] From this point, we /omit/drop/ the dependent variables and write g(x,y) simply as g.
  2. [誤] Here, we abbreviate the derivation of the solution to Eq. (3.4), and instead merely present its result.
    [正] Here, we /omit/do not carry out/ the derivation of the solution to Eq. (3.4), and instead merely present its result.

詳しくはグレン・パケット:『科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現』(京都大学学術出版会,2004)の第1章をご参照下さい。

◆今回のポイント
1)「abbreviate」の「省略する」は誤訳。「短くする」という意味で用いる
2)「省く」の同義語として使用したい場合は「omit」、「delete」、「remove」等を使う
『学術著作物執筆における “アブストラクト”を書く際のポイント』につづきます
Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから

科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm

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