研究者の技術シーズで産業を変える!NEDO TCP | 研究の現場で聞いてみた!

コラボリーの連載企画「研究の現場で聞いてみた!」では、これまでも NEDO Technology Commercialization Program の最優秀賞受賞者のロングインタビューをお届けしてきました*。NEDO TCPは、研究者の技術シーズの可能性に光をあて、産業を変革する大学発ベンチャーの起業支援プログラム。今回は現在2016年度公募を行っている NEDO TCP チームのみなさんにお話をうかがいました。NEDO TCP 突破の秘訣など、コラボリーでしか聞けない話題も盛りだくさんです。
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
イノベーション推進部 スタートアップグループ主幹 吉岡 恒
イノベーション推進部 スタートアップグループ主査 英 美喜夫
株式会社 日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門 戦略コンサルティンググループ
通信メディア・ハイテク戦略クラスター 研究員 桑原 優樹
聞き手:株式会社ジー・サーチ データベース営業部長 杉山 岳文
インタビュー:2016年7月20日

 

NEDO Technology Commercialization Program とは
NEDO Technology Commercialization Program とは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による、国内の大学発起業家候補に対する起業支援プログラム。将来有望な科学技術シーズを保有する大学発起業家候補に対し、第一線のメンターによる事業計画作成支援や投資家へのプレゼンテーション研修、企業やベンチャーキャピタルとのネットワーク構築など、技術シーズ事業化の実現につなげるための第一歩を支援するプログラムです。


研究者の技術シーズで産業を変える!NEDO TCP (前編) からの続き

NEDO TCP:コンテスト選出のプロセス

NEDO TCP:コンテスト選出のプロセス
審査のプロセスを教えていただけますか?TCPでは公募の申請書に対して添削を受けられる、と聞いています。
桑原:書類の添削については希望者全員に対して行っていますよ。まず一次は書類により選考を行い、その後集合研修を受けていただきます。集合研修は1日終日、東京と大阪で実施。技術シーズの事業化について学びます。シリコンバレーで起業した経験がある方に講師をお願いしており、どのように会社を立ち上げればよいのか、ビジネスプランの作成、投資家に対する対応などを学びます。

開始当初は研修前にピッチをやっていたんです。これが、どうしても学会発表になってしまって。みなさん、技術シーズの良さを力説してしまう。そこで、ビジネスの観点からどのように技術シーズを見ればよいのかをメンターに指導していただいてから、投資家のみなさんを呼んでピッチコンテストをする、という流れになりました。

吉岡:やはり研究者は「技術がよければマーケットは付いてくる」と思い込んでいる方も多いので、このマインドをいかに変革するか、自ら気づきを得るか、というのが非常に重要です。

例年のファイナリストの顔ぶれをみると、スタートアップ期の企業の方も応募していますね。
吉岡:はい。主には大学の研究者を対象としていますが、大学に限ってはおりません。
英:実際に企業で参加された方もメンターの指導を受けて、従来ターゲットとしていたマーケットが最適ではない、と感じ、戦略をピポッドされ、TCP終了後、ベンチャーキャピタルから数億円の資金調達をされた方もいらっしゃいますね。

TCP、こういう研究者に参加して欲しい

TCP、こういう研究者に参加して欲しい
応募してもらいたい研究者像について伺いたいのですが。
吉岡:やはり研究技術のビジネス化に少しでも関心がある方ですね。やはり研究者、先生方にビジネスに関心を持ってもらわないことにははじまりません。技術のライセンシングだけでなく、起業もひとつの選択肢として考えていただきたいという思いがありまして。関心のある方に広く応募していただきたいと思っています。

なるほど、TCPに向いている研究者というのはどういう方ですか?
英:成功する方、グッと伸びる方の特徴としては、柔軟であることがひとつ強く言えます。研修もメンターの指導を受け入れて、「あぁ、ビジネスってこういうものなのか、ならばこうしていこう」と自分なりに咀嚼できる人。自分のやってきた研究への自負に加え、新しい視点を受け入れる方は伸びますね。

一昨年、昨年の最優秀賞チームの例では、研究者の方とURA出身の経営的役割を担う方のチームアップで参加されており、素晴らしいバランスだなと感じたのですが、応募されてくる方は、チームで応募されているケースが多いのですか?
英:チームで応募していただくのが理想ではありますが、なかなかそれは難しい。
吉岡:少なくとも1人で起業するというのは現実的ではありません。起業ですから、CEOの役回りの方とCTOの方という組み合わせが一番望ましいのですが、実際は両方とも研究者というケースが多いです。役割分担が整理されていればいいと思います。

桑原:そもそも応募段階では、どのようなチームアップをすればよいのか、ということも分からない人が多いと思います。研修では、スタートアップはメンバーにそれぞれ役割があって、時期によってどのような人材が必要かを学びます。それを踏まえ、チームアップをどうしていくのかを考えていただく。やはり最初はチームを作ること自体が難しいので、研修を進める中で、あぁ、こういう人材が必要だな、というのを感じていただいて、そこから人を探していただくというのでもいいかなと思います。

お話ですと、参加者は事業化に関心がある方から、資金調達をしたい方まで差が出ると思うのですが。
桑原:確かにチームによってまちまちですね。これまでビジネス化について考えたことがありません、という方がいらっしゃれば、ある程度検討されてきて、もうすぐ会社作ります、という方もいらっしゃいます。ばらつきはあっても集合研修で最低限のことはやりますし、メンターはチームレベルにあった形で支援してくださるので、どのようなレベルの方でもプログラムに参加しやすいような形となっていると思います。

英:TCPは参加後に会社を設立しなければならないといった義務もありません。
吉岡:普通、こういう公募では審査の途中で添削する、というのはなかなかありません。選考までに添削によって申請書のレベルをあげてもらえる、というのは大きい特長だと思います。

先程の話のような充実した支援を受けられるわけですから、なんかこう、研究者は恵まれていますよね(笑)。

TCP、審査突破の秘訣を聞いてみた

TCP、審査突破の秘訣を聞いてみた
TCP審査突破の秘訣を伺いたいのですが(笑)。各審査での採択件数はどのようになっていますか?
桑原:昨年は応募が56件、一次審査で33件に選考、二次審査・ファイナリストが14件でした。

一次審査で結構落ちてますね。
英:一次審査は、それほど厳しい選考は行っていないつもりです。NEDOの制度ですから、技術分野のアンマッチ、例えばサービス事業などは選考基準を満たさないことになります。また研究開発型が対象ですので、そのような要素を含んでいる必要があります。スマホやSNSアプリだけ、ではプログラムの趣旨に合いません。

桑原:ポイントは 事前の添削制度を利用すること。審査突破の確率はあがると思います。その後の審査で重要になってくるのはマインド。どうしても最初は「この技術をどう活かすか」という発想になりがちですが、それをある段階で切り替えて、「お客様からみて、この技術はどのような価値を持つんだろう」と考えられるようになるかが非常に重要です。お客様のニーズがあって、そこに技術を当て込むという考え方をして欲しい。もちろん、技術シーズが持つポテンシャルも重要な要素として扱っていますが、お客様目線で技術活用のメリットを説明できるようになると投資家も説得しやすい。審査も通りやすくなると思います。

ファイナリストの最終選考ですが、そこで発表される資料は非常に枚数が少ないですし、ピッチの時間も限られています。あの場で優秀者を決定しているんですか?
桑原:はい。最終ピッチで優秀者を選考しています。しかし、審査員の方々は事前に申請書の内容を把握されていますし、技術への理解もあります。ですが、最終的な判断はその場での発表を見て判断いただいています。もちろん、プレゼンテーションの指導もしっかりやりますし、発表者の情熱や資質を見ますので、最後は熱意をアピールして頂ければと思います。

吉岡:TCPですから、技術シーズの良さも大切です。優秀者にはシリコンバレーでピッチの機会が得られますが、そこではピッチの上手い下手というよりも、投資家は本当にシーズの可能性を見極めますので、やはりシーズの良さは必要ですね。

お、TCP制度のメルマガを受け付けてますね。
桑原:はい。最新情報を随時配信しているので、興味のある方は登録いただきたいです(申し込みはNEDO TCPウェブページ の「ユーザー登録(メルマガ配信)」から)。

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No Maps NEDO Dream Pitch:今年は北海道版イベントも

今年は北海道でも開催されていますよね。
吉岡:はい。No Maps NEDO Dream Pitch と題しまして、TCPの北海道版ともいえるコンテストを開催します。これは、SXSW(South by Southwest) というアメリカのテキサスはオースティンで開かれる映画と音楽とインタラクティブをテーマとした集合型イベントで、ベンチャー創出という面でも非常にもりあがっているイベントがあるのですが、これをモチーフに札幌でイベントを企画されている有志がいらっしゃって、それに経済産業省北海道経済産業局とNEDOが相乗りする形で、ピッチイベントをやるものです。

形式的にはTCPの北海道バージョン。募集して書類添削、集合研修、メンター支援を付けてピッチコンテストをやりまして、優秀だった方には、TCPの本戦の最終戦に出場いただく。もちろん、そこで優勝すればシリコンバレーに行っていただく、ということを考えています。

NEDO TCP 担当者にとってのコラボレーションとは?

最後にTCP担当者のみなさんにとっての「コラボレーション」とは何ですか?

桑原:TCPを通じて分かったことですが、何事も1人で全部やる、というのは無理な話です。得意なところを活かしあって、ひとつのものを作り上げていく、ということが大切に思います。研究者としては技術を理解されていることが一番ですし、そこに稀有な人材が集まってきて、経営や財務、それぞれ得意な方がコラボレーションすることで、世界で活躍できるようになるのかな、と思います。

英:スタートアップ、特にシーズしか持っていない方にとっては、周辺の支援が大事と思います。相談できる相手がいないと、起業というのは、はじめてのことでしょうから自分で判断するのは非常に難しい。メンターや専門家とのコラボレーションも大事です。最終ピッチでは公共の場で発表することになりますが、そこで企業との連携も出てくるでしょう。いろんなコラボレーションを通じて自分の技術を世に出していくべき、と感じています。

吉岡:私たちが目指しているのはベンチャーエコシステムの構築です。残念ながら日本はまだ未発達。起業家、大学、研究者、大学事務方、そして投資家、金融、そして公的支援をやっている私たち。そしてファーストカスタマーである中堅・大企業、彼らが持っている人・モノ・カネを如何にエコシステムに巻き込んでいくか、というところをテーマに取り組んでおりますし、大企業を含めたコラボレーションが出来ればエコシステムの構築につながるのではと思っています。

本日はありがとうございました。

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