知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回『英語における句読点の基本 “コンマ”(1)』はこちら

◎今回は、「コンマ」の第2回です。コンマを入れるか入れないかによって、文章の意味合いが変わってしまうことがあります。改めて「コンマ」の使い方について確認してみましょう。

前置詞句との併用

コンマは前置詞句の直後にも置かれることが多いです。コンマが必要かどうかは前置詞句とその後に来る句や節との関係によります。前置詞句とその後の句・節との間に距離を置くべきであれば、コンマが必要です。

コンマが必要

  1. In the present case, the objection is meaningless.
  2. These plants are useful for many reasons, as seen below.

コンマが不要

  1. I planted my carrots in two neat rows and waited for them to grow.
  2. The temperature of this material is beyond the melting point.

上記の各文のコンマの使用における違いはそれぞれの前置詞句の、文全体における役割から理解できます。(1)では、「In the present case」が副詞として独立節「the objection is meaningless」全体を修飾しています。ここでコンマを削除すると、「In the present case」と名詞「objection」との関係がより近くなり、「In the present case」が形容詞として「objection」だけを修飾していると勘違いされがちです。

同様に、例文(2)においてコンマがないと、「as seen below」が「reasons」のみを修飾していると解釈されてしまいますが、「as seen below」が、先行する独立節全体を修飾することが本来の意図です。

一方、例文(3)と(4)ではコンマが加わるとそれによって導入される「距離」は不適切なものとなってしまいます。
(3)の場合は動詞が「planted」と「waited」から成る複合動詞となっているため、もし「in two neat rows」の後にコンマを置いた場合、動詞の2つの構成部分が切り離されてしまいます。これは文法上の誤りです。
(4)では、「of this material」の後にコンマを入れると主語「temperature」と動詞「is」が分離されてしまいます。これも文法的な誤りです。

「[名詞], [修飾語句]」というパターン

修飾語句と修飾される語句の間にコンマがある場合とない場合とでは、意味上で大きな違いが生じます。

  1. (a) My new book, which I loaned to my friend, is very interesting.
    (b) My new book that I loaned to my friend is very interesting.
  2. (a) The oldest dog, sitting on that chair, doesn’t hear well.
    (b) The oldest dog sitting on that chair doesn’t hear well.
  3. (a) We ran around the lake, in the park.
    (b) We ran around the lake in the park.
  4. (a) I received a phone call from my brother, Bruce.
    (b) I received a phone call from my brother Bruce.

上記の4組の例文とも、(a)では修飾する語・句・節(「which I loaned to my friend」、「sitting on that chair」、「in the park」、「Bruce」)と修飾される語(「book」、「dog」、「lake」、「brother」)との間にコンマが置かれています。そのため前者は非限定修飾語・句・節となり、後者が示す意味を限定せず、後者の名詞に対して追加の情報を与えるだけです。これらの場合、修飾語句がなくても文全体が表す意味は変わりません。

一方、(b)ではコンマがないためそれぞれの修飾語句は修飾される名詞の意味を限定し、修飾語句を除くと文全体の意味が本質的に変わってしまいます。

上記の違いを、コンマが加える「距離」の観点からもう一度見てみましょう。
(a)の場合はコンマがあることによって修飾する語句と修飾される語句が切り離されています。その結果、修飾される語句が示す意味を理解するために修飾する語句を参照する必要がないと捉えられます。
対照的に、(b)の場合はコンマがないため、修飾する語句と修飾される語句がくっついており一体となっていると解釈されます。よって文の意味を変えずに修飾語句のみを削除することはできません。

リストでの用法

  1. (a) I like beer, wine and whiskey.
    (b) I like beer, wine, and whiskey.
  2. My friend brought two fishing poles and lures, a cooler full of drinks, and more than enough food for both of us.
  3. I made sure that the stove was turned off, the heat was turned down, and the doors were all locked.

(9)によって例示されるように、リストの各項目が単語である場合は最後の項目の前に置かれた「and」の前にコンマを入れても入れなくても構いません 。
一方、(10)と(11)で見られるように、リストの各項目が複数の語を含む句あるいは節の場合は、最後の項目の前に置かれた「and」の前にはコンマを入れるべきです。

2つの形容詞を分ける用法

以下の例文を見てみましょう。

  1. My friend lives in a large, brown house.
  2. My friend has a large pickup truck.

上記の文に見られるように、形容詞が連続して出現する場合、形容詞の間にコンマが置かれる場合とそうでない場合があります。以下で両者の違いを説明します。
(12)のような「[形容詞1], [形容詞2] [名詞]」という文型の場合は「[形容詞1]」と「[形容詞2]」が等しく「[名詞]」を修飾するのに対し、(13)のように「[形容詞1] [形容詞2] [名詞]」という文型の場合は、まず「[形容詞2]」が直接「[名詞]」を修飾し、「[形容詞1]」が「[形容詞2]+[名詞]」を修飾することになります。
よって後者の場合は「[名詞]」の主要な性質が「[形容詞2]」によって表され、「[形容詞1]」は二次的な性質を表すと考えられます。対照的に前者の場合は、それぞれの形容詞がともに「[名詞]」の第一の性質を表すと解釈されます。

その他の用法

これまで論じてきたのはコンマの主な用法と思われるものですが、それ以外にもいくつかの用法があります。以下に例文を示します。

  1. (a) You should include maps, tents, rain gear, etc.
    (b) You should include maps, tents, rain gear, and so on.
  2. (a) On March 16th, 2003, the situation changed drastically.
    (b) On March 16, 2003, the situation changed drastically.
    (c) On the 16th of March 2003, the situation changed drastically.
  3. The man said, “Please visit again,” and then he left.
  4. (手紙の書き出し)Dear Professor Jones,
◆今回のポイント
1)前置詞句とその後の句・節との間に距離を置くべきであれば、コンマが必要
2)修飾語句と修飾される語句の間にコンマがある場合とない場合とでは意味がかわってしまうので注意する
3)リストの各項目が複数の語を含む句あるいは節の場合は、最後の項目の前に置かれた「and」の前にはコンマを入れる
『混同しやすい用語と表現 “ofとfor”』につづきます
Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm

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