知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回『英語で混同しやすい用語や表現 “amongとbetween”』はこちら

◎今回、日本では「カンマ」とも呼ばれる「コンマ」の用法についてです。日本の読点と同様に、文章の区切りを表す記号ですが、英文においては比較的厳密にその用法が決められています。前にご紹介した「コロン」の用法とあわせて、改めて「コンマ」の使い方について確認してみましょう。

序論

コンマの持つ意味はピリオドやセミコロンと似ており、その基本的な役割は文章と文章の間に「距離」を置くことです 。コンマによって文中に間隔が生じることにより、その前後の文章が切り離され、それぞれの部分がある程度独立した意味を持つようになります。以下でこうしたコンマの役割について、いくつかの具体例を挙げて考察します。

「[従属節], [独立節]」というパターン

従属節が独立節に先行する場合にはその間にコンマが必要です 。

  1. If you take this train, you will end up in New Jersey.
  2. Whenever I take your advice, I wonder what I was thinking.

このような場合コンマは節どうしの区切りを示し、それぞれの節が表す内容をはっきりと分けます。

「[独立節], [接続詞+独立節]」というパターン

2つの独立節が隣り合っている場合は、独立節どうしを結ぶためにコンマと等位接続詞(and、but、orなど)が必要です。

  1. In 1492, Columbus arrived in North America, and the resulting sociological changes were profound.
  2. This is an interesting result, but it is not the first of its kind.

このようにコンマと接続詞を用いると、それぞれの節が独立した意味を持っていることが示されます

「[独立節], [従属節]」というパターン

「[独立節], [従属節]」という構文においては、通常節と節の間にコンマは入りません。しかしこのルールには例外があります。以下にその例外を示します。

  1. (a) I did not leave home today, because I did not want to see anyone.
    (b) I did not leave home today because I did not want to see anyone.

上記の文はいずれも文法的には正しいのですが、(a)で加わるコンマが原因で意味が異なってきます。(a)の主旨は「今日家を出なかった」ということのみです。「誰にも会いたくなかった」というのは本筋から離れて付け加えられた情報です。

対照的に、(b)は「誰にも会いたくなかったから、家を出なかった」という意味を表し、「誰にも会いたくなかった」というメッセージが主旨となります。
よって以下それぞれの質問に対し、例文“6(a)”と“6(b)”は自然な回答となり得るのです。

  1. (a) Where were you today?
    (b) Why didn’t you leave home today?

接続副詞との併用

接続副詞は文頭(あるいは節頭)に置かれ、文と文(あるいは節と節)を意味の上でつなぐ役割を果たす副詞です。接続副詞の後にはコンマが必ず来ます。これにより接続副詞がその前後の文または節どうしを「結ぶ」という役割がはっきりと示されます。

  1. However, this conclusion is suspect.
  2. Furthermore, the type of system considered here is quite general.
  3. Nevertheless, if we delete the first term, the resulting equation yields non-divergent solutions.

その他の副詞との併用

接続副詞以外の副詞が文頭・節頭に置かれることもあります。その場合はコンマを入れるか入れないかによって、副詞の役割が変わります。以下の例文を見てみましょう。

  1. (a) Interestingly reading the book made the child fall asleep.
    (b) Interestingly, reading the book made the child fall asleep.

(a)では、コンマがないことによって、「Interestingly」が「reading」を修飾していると解釈されます。それゆえ、この文は「Reading the book in an interesting manner made the child fall asleep」という意味で捉えられます。一方、(b)では「Interestingly」が文全体を修飾しているため「reading the book made the child fall asleep」ということ自体が「面白い(Interesting)」と解釈されます。

◆今回のポイント
1)「コンマ」の基本的な役割は文章と文章の間に「距離」を置くこと
2)「コンマ」により前後の文章が切り離され、それぞれの部分がある程度独立した意味を持つようになる
  ※それによって文章の意味や、主体となる部分(意味合い)が違ってくる点に注意する
3)2つの独立節が隣り合っている場合は、独立節どうしを結ぶためにコンマと等位接続詞(and、but、orなど)が必要
『英語における句読点の基本 “コンマ” (2)』につづきます
Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm

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