知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回『英語における句読点の基本 “コロン”』はこちら

◎なんとなく感覚ではわかっているつもりでも、よくよく考えると、正しいのかわからなくなってしまうものというのがあるものです。英語表記の「大文字・小文字の使い分け」も、そういったものの一つではないでしょうか。今回から数回にわたり、英語における大文字・小文字の使い分けについてご紹介します。改めて用法について確認してみてはいかがでしょう。

固有名詞における使い分け

1.大小文字の使い分け

原則として固有名詞の最初の1文字は大文字になります。また、固有名詞が2つ以上の単語を含む場合は(冠詞、接続詞、前置詞を除いて*)その各単語の先頭文字を大文字にします。このルールに関して最も注意したいことは、固有名詞が一般的な単語を含むこともしばしばあり、その単語の先頭文字も大文字になるという点です。たとえば以下の固有名詞がそのような例として挙げられます。

* 原則として冠詞、接続詞、前置詞はすべて小文字で表記されますが、それが固有名詞の先頭に置かれる場合は語頭が大文字になることもあります。「The Oxford English Dictionary」はその有名な例です(関連した解説を第4節で行います)。

  • Pacific Ocean, United Nations, Lake Superior, Black Forest, Kyoto University, Center for Advanced Study, National Institute of Health

これらの固有名詞は一般的な(つまり、個々で見た場合固有名詞ではない)単語を含み、それらの単語の最初の1文字もそれぞれ大文字になっているという点に注目してください。

なお、ハイフンを含む固有名詞の場合は2つのケースに分かれます。ハイフンによって結ばれるものが独立した単語どうしであれば(たとえば「Cedars-Sinai Medical Center」、「Three-Fifths Compromise」など)、その2語とも先頭の文字は大文字になり、そうでなければ(たとえば「Institute for Non-invasive Surgery」、「Society for Promotion of Eco-friendly Sustainable Development」など)、後ろにくる単語の先頭文字は小文字になります。

2.固有名詞の基準

ある名詞が固有名詞であるかないかは簡単に決められる場合(たとえば人名、地名など)もありますが、判断のつかない微妙なケースもあります。ここではその基準について説明したいと思います。

ある名詞が固有名詞と見なされる条件は、その名詞が「特定の物事を指すために作られたもの」だということです。以下の例文はそうした条件を示す具体例です。

  1. (a) The University of Tokyo was established in 1877.
    (b) I will be visiting your university in the fall.
  2. (a) The field of mathematics is very old.
    (b) The mathematics department in our university is quite large.
    (c) The Department of Mathematics is headed by a Fields Medal recipient.
  3. (a) Jacques Chirac was the President of France during the period 1995–2007.
    (b) Someday, I would like to be president.
  4. (a) Our galaxy has a diameter of approximately 100 kly.
    (b) We live in the Milky Way Galaxy.
3.生物学的分類

生物学的分類における大小文字の使い分け方は特殊ですので、ここでそのルールを述べておきます。リンネ式分類法(Linnaean taxonomy)での分類群、つまり、ドメイン(domain)、界(kingdom)、門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、属(genus)、種(species)、亜種(subspecies)、における分類群名では、種より上のものは大文字で、種と亜種は小文字で始まります。

また、大文字・小文字の使い分けとは関係ないことですが分類群名は必ずイタリック体で書かれるということにも留意してください。

◆今回のポイント
1)原則、固有名詞の最初の1文字は大文字、固有名詞が2つ以上の単語を含む場合は各単語の先頭文字を大文字に
 ※固有名詞が一般的な単語を含むこともしばしばあり、その単語の先頭文字も大文字になる事に注意する
 例)Pacific Ocean、Black Forest

2)名詞が固有名詞と見なされる条件は、その名詞が「特定の物事を指すために作られたもの」かで判断する

3)生物学的分類における大小文字の使い分け方は特殊なので注意が必要
 ※分類群名で、種より上のものは大文字、種と亜種は小文字

Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから

科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm

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