知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回『学術著作物における“性別差別的な言葉づかい”の注意点』はこちら

◎「コロン(:)」や「セミコロン(;)」といった欧文由来の句読点は日本人にとってはなじみがあまりないため、普段の生活において厳密に用法を意識しないで使ってしまいがちです。しかし、英文執筆となった場合には正しい用法に基づいた記述が必要となります。今回は、学術英語に照らして「コロン(:)」の用法をご紹介します。

「コロン(:)」の正しい用法

コロンは、文法的にはピリオドと同様に文の終わりを表す役割を果たしますが、その意味はピリオドと異なり、前の文と後の文との特別な関係を示します。つまり、[XXX]: [YYY]という形の構文において、[XXX]と[YYY]に挟まれる「:」が示すのは、「[XXX]という文の役割は[YYY]の内容を導入し、目立たせること」だという意味です。そうしたコロンの典型的な用法を以下に示します。

  1. We need the following ingredients: flour, eggs, milk, sugar and salt.
  2. Each morning, the artist followed the same routine: wake at 6:30; eat breakfast; take a walk; review the previous day’s work; write down a schedule for that day; take a nap for one hour.
  3. This model consists of four fundamental pieces:
    (i) diffusion terms; (ii) linear destabilizing terms; (iii) non-linear coupling terms; (iv) non-linear stabilizing terms.

上記の例からお分かりのように、コロンの前の文は必ず完全文として完結し、コロンの後の文から文法的に独立していなければなりません。しかしそれでも、意味的には前の文と後の文は独立せず、互いに補足し合っています。すなわち、いずれの文も単独ではまとまったアイディアを伝えず、それぞれの文の意味を合わせて一つのアイディアになるわけです。

誤った用法

コロンの誤用はしばしば見うけられますが、そのほとんどのケースが、コロンが一文を文法的に区切ってしまうというもので、それにより文法的な誤りが生じてしまいます。以下にそのような例を示します。

  1. [誤] The main components of this apparatus include: (i) the primary reaction chamber; (ii) the secondary reaction chamber; (iii) the heating element; (iv) the exhaust mechanism; (v) the visualization mechanism.
    [正] The main components of this apparatus include the following: (i) the primary reaction chamber; (ii) the secondary reaction chamber; (iii) the heating element; (iv) the exhaust mechanism; (v) the visualization mechanism.
  2. [誤] This type of treatment has been found to work best for: diabetics, the elderly and stroke victims.
    [正] This type of treatment has been found to work best for diabetics, the elderly and stroke victims.
  3. [誤] The milieu consists of: dendritic cells and T cells.
    [正] The milieu consists of dendritic cells and T cells.
  4. [誤] The first such relation is obtained as: x = a/2.
    [正] The first such relation is x = a/2.
    [正] The first such relation is found to be x = a/2.
    [正] As the first such relation, we obtain x = a/2.
    [正] The first such relation is derived as x = a/2.

上記の各例文では、コロンの誤用により文法的な問題が生じています。(4)の例では、コロンが動詞とその目的語の間に、それ以降の3つの例では、コロンが前置詞とその目的語の間に挿入されています。こういった構文は明らかに誤りです。各例文の下に、それぞれの適切な修正例が示してありますのであわせてご確認ください。

◆今回のポイント
1)「コロン(:)」は文の終わりを表すが、意味はピリオドと異なり前の文と後の文との特別な関係を示す
2)「コロン(:)」は、[XXX]: [YYY]の構文において(主に)以下のような場合に用いる
 ・主文に対する「説明」や「例」を追加する時
 ・リストアップする時 等
3)「コロン(:)」を使う際の注意点
 ・コロンの前の文は必ず完全文として完結し、コロン後の文から文法的に独立させる

  (だたし、それでも意味的には前の文と後の文は独立せず互いに補足し合っている事)
Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから

科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm

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