知らないと損をする学術英語の基礎

■出典:学術英語アカデミー パケット道場~初級アカデミック英語講座~

研究者にとって、国際舞台で自身の研究結果を発信するために英語は必要不可欠なツールのひとつ。しかし、ビジネス用の英語レッスンは巷にあふれていても、学術研究者向けの英語を教えてくれる場はほとんどないのが実情です。初めての英語論文の執筆や学会発表は、研究室の先輩や仲間の見よう見まねで乗り越えた……という方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、初めて英語論文を書く方や学術英語の基礎をもう一度押さえたいという方のために、自らも物理研究者であり、長年京都大学で英語指導を行ってきたパケット先生が、研究者による研究者のための“使える”英語論文執筆の基礎知識をご紹介します。

◎前回『学術著作物における“時制”の基本(後編)』はこちら

◎「concept」と「idea」は似通った意味合いの為、普段の日常会話(特に日本語の)では、厳密に使い分けを意識していない事も多いのではないでしょうか。しかし、学術著作物を執筆するといった場合には、用法の区別を明確に意識して使用する必要があります。今回は「concept」と「idea」の違いについてご紹介します。

conceptとidea

名詞「concept」と「idea」はともにかなり似た意味を持つ語で互換性がある場合もありますが、学術的な面では同一の意味を持つ語として扱うことはできません。これらの語の間には主に3つの意味上の違いがあるためです。

  1. 「concept」の方が一般により抽象的な意味を持つ語として捉えられているという点です。そのため「concept」は科学や数学などといった抽象的な概念をよく扱う専門分野で頻繁に用いられます。
  2. 「concept」は厳密に記述できる対象を指す際により適切であるのに対し、「idea」は正確に記述できない概念やぼんやりした発想などを意味する対象を指す際によく使用されるという点です。
  3. 「idea」は語の持つ意味がかなり多く、「concept」にはない意味を豊富に持っているという点です。「concept」は通常、日本語で言う「概念」または「理解」に相当します。それぞれの用法を以下に示します。
  1. The concept of the infinitesimal limit played a key role in the development of calculus.
  2. Scientists at that time yet had no concept of how to treat experimental uncertainty.

上の文では「concept」を「idea」に置き換えても意味は通じますが、上述した違いにより、文全体は不自然になってしまいます。一方、「idea」の典型的な用法は以下のとおりです。

  1. The idea of treating the input and the output on the same footing is quite novel.
  2. In that paper, the authors develop an idea that was first discussed in Ref. [3].
  3. I had no idea that you were coming.
  4. His idea about how to proceed is quite unconventional.
  5. I once had the idea of becoming an artist.

1.と2.の文において「concept」という語を用いても間違いではありませんが、「idea」の方が意味的にしっくりときます。一方、3.〜5.の文において「concept」を用いることは明らかに不適切です。

◆今回のポイント
1)“concept”は厳密に記述できる対象を指す際に使われる
2)“idea”は正確に記述できない概念やぼんやりした発想などを意味する対象を指す際によく使われる
『英語における「数値」表記の基本』につづきます
Glenn Paquetteグレン・バケット(Glenn Paquette)
1993年イリノイ大学(University of Illinois at Urbana-Champaign)物理学博士課程修了。
1992年に初来日し、1995年から、国際理論物理学誌Progress of Theoretical Physicsの校閲者を務める。京都大学基礎物理研究所に研究員、そして京都大学物理学GCOEに特定准教授として勤務し、京都大学の大学院生に学術英語指導を行う。著書に「科学論文の英語用法百科」。パケット先生のHPはこちらから

科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現科学論文の英語用法百科〈第1編〉よく誤用される単語と表現
単行本: 688ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2004/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4876986290
ISBN-13: 978-4876986293
発売日: 2004/09
商品パッケージの寸法: 22 x 15.5 x 4.5 cm

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