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「クラウドファンディング」って知っていますか?
クラウドファンディング(Crowdfunding)とは、不特定多数の人がインターネットなどを経由して、他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指します。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、最近耳にする機会も多くなってきました。”academist(アカデミスト)”は、2014年4月に立ち上がった日本で初めての学術特化型クラウドファンディングサイトで、研究者自らが発信し、研究資金を集める仕組みです。


在学中にすでにクラウドファンディングの構想を持っていたという柴藤さん。どのようなきっかけで”academist”を立ち上げたのでしょうか。後編は”academist”立ち上げの経緯と思いをアカデミスト株式会社代表取締役 柴藤 亮介さんと取締役 鳥居 佑輝さんに伺いました。各メディアも注目するアカデミスト社の設立秘話、必見です。

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研究内容を研究者本人が発信するサイトを作りたかった

--それでは、話題を変えまして御社について伺います。実は、御社の名前は第一号の「テヅルモヅル」のときに知ってサイトも覗いていたのですが、お会いしてお話を伺おうと思った直接のきっかけはこれなんですよ(日経ヴェリタス第403号を取り出す)。

柴藤:あっ、ヴェリタスさん!記者さんからご連絡をいただき、サービス内容の取材をしていただいたんですよね。

--メディアに取り上げられるにしても、ちょっと媒体が違うなと。これはぜひお話を伺わなければと思いまして。まず伺いたいのですが、なぜクラウドファンディングに着目されたのでしょうか。

柴藤:もともとは、クラウドファンディングサイトではなく、研究者自身が研究内容を発信するサイトを作りたかったんですよね。ただ、研究者は論文執筆や研究で忙しいため、なかなか発信するメリットはありません。でも、もし研究を魅力的に発信するほど研究費が集まるのであれば、積極的に情報発信してくれるのではないかと考え、クラウドファンディングという手段を選びました。

--立ち上げの経緯を教えてください。

柴藤:2013年3月までは、大学院で物理学の勉強と研究をしていました。4月からは会社を作って教育事業を行いながら、acadeimst立ち上げの準備を行い、2014年4月にサービスをリリースしました。その3ヶ月後くらいに友人の紹介で鳥居さんに初めてお会いしました。

--学生の頃にすでに構想を持っていらしたのですね。どうやって思いついたのですか。

柴藤:大学院のときに、異分野交流会を開催していました。各大学からさまざまな分野の大学院生に集まってもらい、研究の魅力やヴィジョンを語るイベントです。参加者の研究内容がとてもおもしろかったので、イベントだけに留まるのではなく、オンラインで幅広い方に伝えられないかなと思いました。ただ、研究者からすると情報発信のメリットがないのではないかと思い、クラウドファンディングの方法を採用したという流れです。

--研究者自身による情報発信ということであれば、ニコニコ学会βと同じ考えかと思いますが、参考にされましたか。

柴藤:もちろんです。動画で研究内容を発信する媒体はたくさんあるので、様々な媒体を参考にさせていただきました。

--新たにクラウドファンディングサイトを立ち上げられた訳ですが、これは一から作られたのですか。

柴藤:そうですね。いろいろな方のご協力をいただきながら、サイトを制作しました。

--現在何名ぐらいで運営されているのですか。

柴藤:副業としてお手伝いしてくれている方を含めて、10名ほどで運営しています。

--立ち上げるとき海外サイトを含めて参考にされたと思いますが、参考あるいはベンチマーク的に意識されているサイトがありますか。

柴藤:シリコンバレー発のExperimentというサイトです。世界で最もプロジェクト数の多いアカデミック・クラウドファンディングサイトで、毎日チェックしています。shibatou

自分の専門分野だけでなくて、学問全体を見渡せる人が活躍できる

--academistという名前の由来を教えてください。

柴藤:これまでの研究者のあり方は、ある学問の特定の分野を徹底的に突き詰めるスタイルだったと理解しています。ただ、研究分野の細分化や技術が発展してきた現状を考えると、これからはそれぞれの専門を持つ研究者がチームを組んで、ひとつの課題に取り組むスタイルも必要になると思うんですよね。そこで、「Physicist」「Chemist」というよりは、専門からひとつ上の階層に視点を置いて研究全体を見渡せる「academist」が増えていくのではないかなと思い、そのようなネーミングにしました。

--Scientistではないのですか(笑)。

柴藤:もちろん、それでも良いとは思いますが(笑)。アカデミアという言葉にこだわりたかったので。

--鳥居さんにお伺いいたします。鳥居さんも、もともとこのような世界に関わってらっしゃったのですか。

鳥居:私は大学卒業後、ITベンチャーに投資するベンチャーキャピタルに就職しました。共通の友人の紹介で初めて柴藤と出会い、そのときに「テヅルモヅル」のクラウドファンディングについて話を聞きました。

--「テヅルモヅル」の頃はまだ一緒にやっていなかったのですか。

鳥居:そうですね。でもその頃から、研究費を必要としている研究者に直接支援ができて、社会全体で研究を盛り上げることができる点がインターネットらしくて素敵だな、と感じていました。

--一緒にやっていこうという、きっかけは何だったのでしょうか。

鳥居:やっぱり柴藤さんの思いがすごく強いことです。初めて会ったときは当時プロジェクト2個だったのですが、今では22個なんですよね。ここまで継続してサービスを運営できる熱い思いに惚れてしまいました。

--鳥居さんが来られて変わりましたか。

柴藤:はい、かなり変わりました。IT業界に精通した鳥居さんのアイデアをいただいたり、さまざまな方をご紹介していただいたりなど、大変ありがたいです。昔に比べると仕事の分担もできるようになり、自分の仕事がより明確になりました。

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うちに来れば今一番熱くて面白い研究者がいる

--さきほど、クラウドファンディングサイトが日本だけで100ぐらいあると伺って、びっくりしたのですが、academistならではの特長はどのようなところでしょうか。

柴藤:学術系のプロジェクトしかないところです。academistのサイトを訪問すれば、いろいろな分野の研究者が、最先端の研究内容を紹介しているんです。特に面白いのは、研究成果ではなくこれから明らかにしていきたい研究内容を研究者本人が語ってくれていることだと思います。

--今後、どのように進んでいきたいですか。

柴藤:まずは、研究者の方にacademistのことを知っていただけるような取り組みを進めていきたいです。その上で、研究費を集めながらアウトリーチ活動ができることに魅力を感じていただけるように工夫していきたいと思います。5年後、10年後には根付いている仕組みになると思うので、ぜひクラウドファンディングの先駆者としてさまざまな方にご利用いただきたいです。

--応援する側もその研究者が大きな仕事を達成したとき、「俺が応援したんだ」と言えますよね。

柴藤:そうかもしれませんね。研究者と一緒に学問の発展に貢献できる点が非常に面白いと思います。

--本日はどうもありがとうございました。group_photo

「テヅルモヅル」の標本を手にする柴藤さん(右)と鳥居さん