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コラボリーの連載企画「研究の現場で聞いてみた!」、NEDO Technology Commercialization Program で最優秀賞を受賞した “A Protein Synthesis System 3.0” 名古屋大学遺伝子実験施設 多田教授、名古屋大学大学院 理学研究科 野元研究員、そして学術研究・産学官連携推進本部 RAの南 特任講師にお話をうかがいました。

国内の大学発起業家候補に対する起業支援プログラムであるNEDO TCP。名古屋大学は最優秀賞2連覇の快挙となりましたが、タンパク質合成に必要な期間を1/20に短縮し、難合成タンパク質もカバーする新技術、そして研究と起業・事業化の関係についてお聞きしました。

名古屋大学遺伝子実験施設 多田教授、名古屋大学大学院 理学研究科 野元研究員、
名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 南特任講師
聞き手:株式会社ジー・サーチ新規事業開発室長 杉山 岳文
インタビュー 2016年1月28日



インタビューの前編 から続きます

新タンパク質合成法で研究が変わる! NEDO TCP 最優秀賞受賞 名古屋大学 A Protein Synthesis System 3.0| 研究の現場で聞いてみた!
– NEDO TCP に応募するきっかけやいきさつを教えてください。

多田:NEDO TCP 出場にこぎ着けたのは南さん、福田さんのおかげです。

南:いやいや、私は産学連携部門でリサーチアドミニストレーターをしているのですが、多田先生から「これができる、これもできる」と研究技術について、いろんな話をうかがいまして。当然、その技術の深い部分は分かりませんので、他の先生に聞いてみたり、ネットをググってみたり(笑)なんてしながら、理解を深めていったのですが。その中で、このタンパク質合成の話が凄いんじゃないか、と。現在で52箇所の研究室にタンパク質の提供等の共同研究をされているのですが、みなさん「早く合成して助かった」「これは凄い」と反響ありまして。今まで作れなかったタンパク質が実験室のPCR 機器で作れてしまう。これはポストゲノム研究における研究環境や技術基盤、世界を大きく変えてしまう要素があるのではないかと思うようになりました。そして知財化面等メンバーだった福田さんと事業化についても検討、昨年8月にJST/NEDO共催の展示会「イノベーションジャパン 2015」に出展しました。その時の手応えもあり、これはイケるんじゃないかと思いまして。TCPへの応募は8月を入ってからだったと思います。

– NEDO TCP は研究テーマコンテストではなく、事業化、いわゆるビジネスコンテストですが、事業化検討や計画立案等はどのようにされたのですか?

多田:やはり研究者の私たちだけだと、この技術が持つ本当の可能性や市場性を実感できなかったと思います。起業や事業計画はやはり分かりませんでしたので、南さんの支援をいただきながら勉強しました。

南:昨年、NEDO TCPで優秀賞を受賞された 株式会社 Photo electron Soul ( http://photoelectronsoul.com ) の鈴木さん、NEDO TCP のプログラムを通じて紹介いただいたメンターの墨田さん、鶴下さん、松田さんにも相談にのっていただきました。研究を事業化するという面で、市場規模や事業展開の検討/計画の作り込みが必要です。例えば、通常の産学連携という点では特定企業へのライセンス契約という方法もありますが、この技術を必要とする研究者をターゲットに広く普及させることを考えるとやり方は変わってきます。事業計画は合成キットの販売から着手する計画になっていますが、研究室にあるPCR 機器でタンパク質の合成が可能になることのインパクトを議論したりしました。

多田:起業する以上、収益事業化という面は大切ですが、正直、そこに強いこだわりがあるわけではありません。やはりこの技術が世界のタンパク質を扱う研究者の現場に広まって、便利に使ってもらいたい、と考えますよね。私がデューク大学に行った時の話ですが、自分の研究で手がけていたタンパク質は私の前に在籍していたポスドクが数年にわたって合成にチャレンジしていたものでした。長くタンパク質の合成にチャレンジし、結局合成出来なかったなんて話もあります。もしこの技術があれば、特定疾患の検証ですとか、解析にいろんな手がうてるようになります。当時にこの技術があれば、かなり研究生活は変わっていた気がします。

– 今回の技術の知財化などはどのようにされたのですか?

多田:今回の技術に関しては、特許化した方が良いのではとのアドバイスを受け、福田さんに相談しました。福田さんは知財部門での経験も長く、技術移転の専門家でもありますので。そのような点についても、TCP への応募は、南さん、福田さんの力が大きいです。

南:知財としては、「無細胞タンパク質合成系に用いるための翻訳促進剤及びその利用(特願2015-46470)」 で出願中です、福田さんは会社の代表もされると決意されましたので。

– この技術の可能性に惚れ込んだんでしょうね。

– 研究者が自らの研究を事業化する、という点についておうかがいします。研究の社会還元に加え、起業するということは事業を通じて、社会を、人の人生を変えていくことが含まれると思いますが、研究者として、どのようにお考えですか?

多田:そうですね、確かに研究が会社の事業という形をとることで、研究成果が確実に必要とする人の手に渡るという意義があると思います。研究が人を、人生を変えるという点では福田さん、野元さんも含め、可能性というか大きく変えてしまうんでしょうね。

野元:今回の技術は、これまでの学会発表で合成方を知った研究者が「こういうタンパク質はつくれないの?」と興味を持っていただいたり、採用したいと連絡をいただいたりと、研究者の口コミで広がっていったというところがとても嬉しかったんです。自分が育てた系ですので、やっぱり可愛いですし。自分の系が人の役にたっているのが嬉しい。この技術で一番助かるのが実験期間の短縮です。この技術を、事業を通じていろんな人に使ってもらいたい、広めたいという気持ちがあります。

学会に出て他の研究者と話すことが日々の研究のモチベーションになります

– 最後に共通の質問です。みなさんとっての「コラボレーション」とは?

多田:うーん、コラボレーションですか、そうですね。研究は1人ではできません。研究をするにも、実験をするにも、論文を書くにも、一緒に取り組む共同研究者が必要です。研究者である以上、新領域など多様な研究者とのコラボレーションを積極的に進める姿勢が必要と思います。自分の研究に人が加わることで、自分では思いつけない全く斬新なアイデアが生まれてくるものです。

– 共同研究者との出会いや人脈作りはどのようにされていますか?

多田:学会活動は大切ですね。私はよく学生に話すのですが、「学会などは懇親会も含めて参加して話をしなさい」と。そこで多くの人と話して知見を広げなさいと。自分自身は振り返ると、学会には出るものの、懇親会は早く切り上げちゃったり(笑)、そんなところがありました。

野元:私は研究を通じて、人がつながっていくのが嬉しいです。日常の研究は同じ部屋に閉じこもって、毎日同じ顔見知りの人と実験をする、という感じですから(笑)。学会では若手の会のようなところにも参加していますが、私はいろんな人と話をしたり、コミュニケーションするのが好きなので、学会に出て他の研究者と話すことが日々の研究のモチベーションになります。発表の時の反応やフィードバックもためになります。だけど、学会に出るためにはデータを揃えないといけない。学会発表というご褒美のために、毎日頑張ろうって気になります(笑)。また、学会の発表で質問をしてもらった方には懇親会の時につかまえて詳しく話をしたり、というのは心がけています。

多田:今回の事業化についても、福田さん、南さん、といった人がいなければ成立しませんよね。

南:人との出会いが大切ですね。

多田:コラボレーション、コラボリーが大事ですよ(笑)。

– あ、ありがとうございます(笑)。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

新タンパク質合成法で研究が変わる! NEDO TCP 最優秀賞受賞 名古屋大学 A Protein Synthesis System 3.0| 研究の現場で聞いてみた!

NEDO Technology Commercialization Program とは
NEDO Technology Commercialization Program とは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による、国内の大学発起業家候補に対する起業支援プログラム。将来有望な科学技術シーズを保有する大学発起業家候補に対し、第一線のメンターによる事業計画作成支援や投資家へのプレゼンテーション研修、企業やベンチャーキャピタルとのネットワーク構築など、技術シーズ事業化の実現につなげるための第一歩を支援するプログラムです。
NEDO TCP 最終発表会(京都)| NEDO
多田安臣遺伝子実験施設教授らの研究チームがNEDO TCP2015において最優秀賞を受賞 | 名古屋大学