tree

森林分野(森林・木材科学分野、関連生物分野)のノーベル賞といわれるマルクス・ヴァーレンベリ賞で昨年、日本のセルロースシングルナノファイバーに関する研究成果が受賞した。
マルクス・ヴァーレンベリ賞は、1981年に創設され、森林・木材科学分野、関連生物学分野で独創的かつ卓越した研究成果、あるいは実用化に大きく貢献した功績を対象として、ヴァーレンベリ財団が毎年1名もしくは1グループを表彰するもの。今回の日本人研究者の受賞はアジアで初受賞となる快挙だ。

東京大学大学院農学生命科学研究科の磯貝明教授と齋藤継之准教授、元・同研究科助教で現フランス国立科学研究庁植物高分子研究所上級研究員の西山義春博士が、国産未利用針葉樹材から得られる木材セルロースから、TEMPO酸化触媒を用いて、高効率にセルロースシングルナノファイバー(以下、CSNF)を生成する革新的な研究が評価され、アジアで初めてマルクス・ヴァーレンベリ賞を受賞しました。

ノーベル賞ほど大きく取り上げられなかったが非常に大きな成果であり、新素材CSNFも産業界を大きく変える可能性があるバイオマスであるので、改めて紹介したい。

植物の体を維持する植物細胞壁の骨格成分としてセルロースナノファイバーがある。この成分を利用しやすいように細かく化学的、機械的に分解したものがセルロースシングルナノファイバー(CSNF)だ。大きさは、幅数ナノメートル、長さ数ミクロンで重さは鉄の5分の1ながら強度は5倍というバイオマス由来の再生可能なナノ素材として今注目の新素材だ。
しかし、細胞壁内で強く結束して存在する為、素材として幅広く活用できるようナノレベルまでほぐして取り出すのにエネルギーコストが掛かるのが課題だった。磯貝教授らの見出した「TEMPO酸化触媒」方法は従来にくらべ、劇的にエネルギー消費を低減できる上、ナノファイバーの均質性も向上する。この革新的な成果と、それによりCSNF研究が広がり産業発展・応用への道筋をつけた点が評価され、今回の受賞となった。

昨年、日本は世界にさきがけCSNFの実用化に成功した。CSNFの研究について日本はいま世界の先端にいる。森林資源が豊富なことも強みだ。今後、化粧品や食品、医療など幅広い分野での応用が期待されている。CSNFの今後に注目したい。