新タンパク質合成法で研究が変わる! NEDO TCP 最優秀賞受賞 名古屋大学 A Protein Synthesis System 3.0

コラボリーの連載企画「研究の現場で聞いてみた!」、NEDO Technology Commercialization Program で最優秀賞を受賞した “A Protein Synthesis System 3.0” 名古屋大学遺伝子実験施設 多田教授、名古屋大学大学院 理学研究科 野元研究員、そして学術研究・産学官連携推進本部 RAの南 特任講師にお話をうかがいました。

国内の大学発起業家候補に対する起業支援プログラムであるNEDO TCP。名古屋大学は最優秀賞2連覇の快挙となりましたが、タンパク質合成に必要な期間を1/20に短縮し、難合成タンパク質もカバーする新技術、そして研究と起業・事業化の関係についてお聞きしました。

名古屋大学遺伝子実験施設 多田教授、名古屋大学大学院 理学研究科 野元研究員、
名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 南特任講師
聞き手:株式会社ジー・サーチ新規事業開発室長 杉山 岳文
インタビュー 2016年1月28日


新タンパク質合成法で研究が変わる! NEDO TCP 最優秀賞受賞 名古屋大学 A Protein Synthesis System 3.0| 研究の現場で聞いてみた!

膜タンパク質を1日で合成する新技術が研究現場を変えていく

– NEDO TCP 最優秀賞の受賞おめでとうございます。まずは最優秀賞を受賞したチーム、 A Protein Synthesis System 3.0 のご紹介からお願いします。

多田:はい、私たちは、名古屋大学の知財・移転グループの福田雄一、名古屋大学で植物ゲノム解析分野を専門にしている私、多田安臣、そして博士後期課程の学生ながらに事業の中核となるタンパク質合成の技術を開発した多田研究室所属の野元美佳研究員の3人によるチームです。私たちの NEDO TCP チャレンジのために、名古屋大学の学術研究・産学官連携推進本部の南賢尚さんのサポートをいただいています。

事業として、タンパク質の合成キットと合成タンパク質そのものの販売を計画しています。私たちが開発した技術は、これまでクローニングからタンパク質合成までよくて2週間ほどかかっていたタンパク質合成系を1日ほどで合成するものです。

通常、タンパク質の合成は大腸菌等の細胞系から合成を行いますが、クローニングからタンパク質合成まで少なくとも2週間ほどが必要でした。野元さんが開発した無細胞合成手法では、cDNAからクローニングすることなく標的となるタンパク質を直接合成します。またタンパク質に「修飾性」というのですが、N末端とC末端にタグ付けなども自由度高く行えます。そして従来の手法では合成が非常に難しかった膜タンパク質、キナーゼ、ホルモン受容体、転写因子、光受容体等のタンパク質についても合成が可能で、収量も大きく改善しているのが特徴です。

新タンパク質合成法で研究が変わる! NEDO TCP 最優秀賞受賞 名古屋大学 A Protein Synthesis System 3.0(前編)| 研究の現場で聞いてみた!

野元:タンパク質の合成は大腸菌や昆虫を使うもの等いくつかの方法があります。簡単に説明すると cDNAからプラスミドを作成し、遺伝子組換え等の操作を行い、培養・集菌・溶菌を経て標的となるタンパク質を合成するといった手順が必要でしたが、非常に時間がかかるものでした。これを cDNA からPCRにかけることで直接mRNAを作り、時間がかかる工程を一挙にはぶいて直接タンパク質を合成します。私自身、研究のためにタンパク質の合成を行いますが、その実験の手間を省き、効率をあげるために行ってきた工夫がベースとなっています。

多田:難合成もしくは合成が不可能だった多種類のタンパク質を確実に合成することが可能で、長い時間がかかっていたタンパク質合成を1日程度で実現します。これはタンパク質を扱う研究現場に非常に大きいインパクトを与えるものです。通常、研究に使う標的タンパク質を合成するのに時間がかかったり、膜タンパク質などうまく合成ができなかったりするものがあるのですが、この技術を使うことで、スクリーニングをぎゅっと短くでき、創薬標的因子の合成や農業における品種開発などタンパク質を使うすべての研究者の研究環境を全く違ったものに変えてしまう力があります。

例えば、従来合成が難しかった転写因子は遺伝子発現を制御するためにさまざまな遺伝子治療の研究対象であったり、同様に多剤排出輸送体は薬剤耐性に関与しているタンパク質で、耐性菌に対する薬の研究に、あるいは、リン酸化酵素は細胞間の増殖等の情報のやりとりを行うタンパク質です。これら細胞内で重要なタンパク質が簡単にいつでも合成できるようになることで研究が一気に加速される可能性があります。実際に、既に全世界52箇所の大学/研究室でこの技術で作られたタンパク質が研究されており、技術に対して高い評価を頂いています。

次ページへ 1 2