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米科学誌サイエンス(Science)は12月17日、今年科学に重要な発展、業績を与えたものとしてゲノム編集技術「クリスパー(CRISPR)」を選定した。

米科学誌サイエンス(Science)は17日、「クリスパー(CRISPR)」と呼ばれる遺伝子編集技術を「2015年の画期的発見」に選定した。保健・医薬分野で革命をもたらす可能性があるという。

2015年を表す漢字や、流行語など、今年を総括する記事や発表が多くなってくるといよいよ年の瀬といった趣だ。
今回、米サイエンス(Science)誌で選定された「クリスパー(CRISPR)」はゲノム編集の革新的な技術で、今もっともノーベル賞に近いといわれている。また、この技術を使って中国の研究チームがヒト受精卵でゲノム編集したと発表し物議を醸すなど、革新性・問題定義(インパクト)といった点でも今回の選定はうなずけるものだ。

ここで言われている「クリスパー(CRISPR)」とは、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9システムのことである。もともとのクリスパー(CRISPR)は、細菌や古細菌などの免疫防護システムで石野良純教授らによって発見されたものだ。この細菌の防御システムであるクリスパー(CRISPR)システムの働きに着目したDoudna博士とCharpentier博士が、ゲノム編集に利用できるように改良、確立されたのがゲノム編集技術「CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)」だ。

このCRISPR/Cas9が革新的といわれる理由は、従来のゲノム編集方法に比べ、格段に簡単且つ、(比較的)狙った場所を編集できる点にある。CRISPR/Cas9の普及によりゲノム研究のスピードが飛躍的に向上すると考えられており、いよいよ人類は本格的な遺伝子治療へ新たな一歩を踏み出したといえる。

そして、ゲノム編集技術の発展と共に問題となるのが、倫理上の問題だ。遺伝子治療で注入されるゲノム編集された細胞と、オリジナルのゲノムをもつ細胞は体内で混在するが、この状態ではその人の子どもに改変されたゲノムが受け継がれることはない。問題となるのは、生殖細胞や受精卵でゲノム編集をおこなう場合だ。前述した中国の研究チームは、不妊治療院から入手した「染色体異常でもともと生児出産が不可能な受精卵を使って」としたものの、ヒト受精卵を使ってのゲノム編集で物議を醸した。また、同発表によると狙い通りに置き換わっていたのはわずかで、100%の確度が必要なゲノム編集において、技術的にはまだまだ検討の余地が残されている点も浮き彫りとなった。

生物学的に人間に恒久的な影響を与える危険性や、倫理学的な問題など課題は山積しているが、CRISPR/Cas9システムの革新性、研究現場へのインパクトに疑いの余地はない。

サイエンスは、多くが「クリスパーがゲノム編集で他の手法に比べ、遺伝子を適切な部位に配置する能力が優れていることと、その手法が低コストで使いやすいこと」に興奮していると述べている。

科学の発展が、等しく地球環境ならびに人類に益となる事を切に祈りつつ。
みなさまどうぞ、よいお年をお迎えください。