AKATSUKI_20151207_UVI

12月9日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は金星探査機「あかつき」が12月7日に実施した姿勢制御用エンジン噴射で金星周回軌道に無事投入されたと発表した。
2010年12月7日に軌道投入中の事故により投入失敗、軌道をはずれてから5年、スタッフ懸命の努力により軌道修正しての再挑戦で今回の成功となった。

姿勢制御用エンジン噴射後の探査機軌道の計測と計算の結果、「あかつき」は、金星周回周期約13日14時間、金星に最も近いところ(近金点)では高度約400km、金星から最も遠いところ(遠金点)では高度約44万kmの楕円軌道を、金星の自転と同じ方向に周回していることがわかりました。

今後は搭載している科学観測機器である2μmカメラ(IR2)、雷・大気光カメラ(LAC)、超高安定発振器(USO)の立上げ及び機能確認を行います。
既に機能確認済みの3つの観測機器(1μmカメラ(IR1)、中間赤外カメラ(LIR)、紫外イメージャ(UVI))と合わせて約3か月間の初期観測を行うとともに、軌道制御運用を行って徐々に金星を9日間程度で周回する楕円軌道へと移行する予定です。
その後、平成28(2016)年4月ごろから定常観測に移行する予定です。

「狂風世界(原題:The Wind from Nowhere)」というSF小説をご存じだろうか。都市を崩壊させる烈風が地球上を吹き荒れはじめ、その中で翻弄される人々と自然の猛威に毅然と立ち向かう人々を描いた「世界」シリーズで著名なSF作家、J.G.バラードの長編処女作だ。
SF小説とはいえ、ビルが倒壊するほどの烈風が地球全体を吹き荒れるとはあまりにも荒唐無稽な設定と思われるかもしれないが、実際起こる可能性があるかもしれない。なぜなら、地球のお隣金星では秒速100mともいわれる自転を追い越す程の烈風「高速大気循環(スーパーローテーション)」が常に起こっているからだ。
常々、金星の姿は「温暖化」が進んだ地球の姿と例えられることが多い。ともすれば、地球温暖化が進んだ場合、金星で起こっている現象スーパーローテーションが地球でも発生するかもしれないというのは考え過ぎだろうか。
今回、金星の周回軌道へ投入成功した「あかつき」はこの「高速大気循環(スーパーローテーション)」がなぜ起こるのかなど、金星の大気循環・大気構造解明に迫るのが大きなミッションだ。

金星探査機「あかつき」のミッション
金星周回軌道から雲の下まで透視する3次元的なリモートセンシングによって、地球の双子星と言われる金星の気候のしくみに迫る。

  • 高速大気循環「スーパーローテーション」はなぜ起こるのか
  • 大気は上下・南北にどう循環しているのか
  • 全球を隙間無くおおう雲はどう作られるのか
  • 氷晶の生じない大気に雷は起こるか
  • 活火山はあるか

他の惑星で起こっている気象現象は地球では想像できないものばかり。「高速大気循環(スーパーローテーション)」もその一つ、他の惑星の気象現象解明は地球環境を理解する上でも大いに役立つはずだ。これから始まる「あかつき」の観測に期待したい。

関連情報
プレスリリース - 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
金星探査機「あかつき」(PLANET-C) - JAXA「あかつき」特設ページ
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