研究の現場で聞いてみた!名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師、知財・技術移転グループ鈴木孝征特任助教

コラボリーの連載企画「研究の現場で聞いてみた!」、NEDO Technology Commercialization Program で最優秀賞を受賞した “Photocathode Electron Soul” 名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師、知財・技術移転グループ鈴木孝征特任助教のインタビュー最終回です。

大学発ベンチャーとして自らの研究を事業化し、「出口の見えない昨今の若手研究者のロールモデル(手本)になりたい」と語る両氏の研究に対する想いとは。迷える若手研究者、ポスドク必見のインタビュー、最終となる後編は、若手研究者のロールモデルになりたい、と話すお二人の研究観についてお話しいただきます。

名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師、知財・技術移転グループ鈴木孝征特任助教
聞き手:株式会社ジー・サーチ新規事業開発室長 杉山 岳文
インタビュー 2015年4月28日



インタビュー前編中編 の続きです。

ベンチャー、大学、ファンドリーが相互にコラボレーションするモデル

「若手研究者のロールモデルになりたい」 ポスドク必見 NEDO TCP 最優秀賞受賞 名古屋大学 西谷智博先生、鈴木特任助教 | 研究の現場で聞いてみた!
杉山:つまり、研究を世の中におくりだしていくプロセスの中で、結果的に「起業」が最適というケースが増えているんですね。

西谷:そうです。アメリカのベンチャーの良い例ですが、大学とベンチャーに加え、ファンドリーに相当する中小企業があり、これらが三位一体で機能しているケースがあります。通常、ベンチャー単独では専門家や研究者に加え、高額な分析装置などのインフラを十分に用意はできません。ところが大学や公的研究機関であれば、様々な分野の研究者や分析装置・技術職員などが比較的多く揃っています。それゆえ開発時や顧客からの要望に対して、不明なことや解決が難しいことがあると直ぐに大学・研究機関に電話をして、大学・研究機関側で検討・検証を行い、装置開発や販売に反映できます。また、特に日本には多くの製造業が中小企業により支えられていることからも、装置開発・製造の際のファンドリーに対しても同様の事がいえます。

杉山:米国にはそういう事例があるのをご存知だったんですね。

西谷:TCPのもう一人のメンバーの岡田先生は長年の産業分野の企業に勤めた経験をお持ちです。このアメリカの例は、そのような体制が実際に機能していることを岡田先生が目の当たりにした経験によるものです。ベンチャーが、産業界との接触や市場調査だけでなく、既存技術が持つペイン(困りごと)やニーズを効率的に調査・集約・分析をし、その結果を大学・研究機関へ投げて、様々な専門家を交えて短期間に課題を解決する。またそれとは逆に、大学・研究機関で新しい技術創出の際は、ベンチャーによるその調査・集約・分析の結果を活かして効率的かつ早期に産業分野へ投入する。時間的にも対応の幅の広さとしても、このダイナミックさが研究成果の最大化に繋がると思うんですよね。

杉山:なるほど。それは日本ではあまりみられないんでしょうね。

西谷:アメリカではこのような成功事例がずいぶん前からありますが、日本を含む多くの国で情報の共有が以前より格段に良くなった現状では、どこでも同じような成功があっても良いんじゃないかなと思います。でも、日本がそのような受け皿があるかというと、進んでいるものもありますが、まだ十分ではないと思います。いろいろ試しているところですが、これまでの考え方や規定も同時に変わって行かなければいけないんでしょうね。

先ほど、鈴木さんがデラウェア大学に行ったときの経験談のように、ベンチャーキャピタルが普通にラボミーティングに参加するというのは、日本の環境とは全く違い、土壌がだいぶ違うんだと思います。大学が実学にどれだけ重きを置けるのか、公益や教育との兼ね合いをどうするのかというのが課題かとおもいます。

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