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ORCID(オーキッド)という言葉をご存じでしょうか。ORCIDとは、Open Researcher and Contributor IDの略称で、世界中の研究者に一意の識別子を与えることを目指す国際的な非営利組織です。学術論文や国際共著が急増する中で、同姓同名や婚姻による姓の変更、研究者の異動などにより論文執筆者の同一性の判断が困難になっています。この名寄せ問題を解決しようと立ち上がったプロジェクトがORCIDです。ORCIDを論文投稿に組み込む出版社も現れ、研究者としても無関心ではいられません。

コラボリー/Beats!では、これまで2回にわたり、ORCIDのメンバー機関(ORCID Premium Member)としてORCIDの活動を支援されている株式会社アトラスの大澤響さんにORCIDについて解説していただきましたが、第3回目は、アトラスさんにお邪魔し、ORCIDを支援する「思い」を語っていただきました。

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株式会社アトラス クライアントサポートグループマネージャー代理 大澤 響さん
聞き手:株式会社ジー・サーチ新規事業開発室担当部長 長谷川 均

学術情報に関わるようになったきっかけはJ-STAGE開発

長谷川:本日はよろしくお願いいたします。アトラスさんと言えば学会や研究者向けサービスの印象が強いのですが、学術情報に関わるようになったきっかけはなんでしょうか。

大澤:J-STAGE*の開発に携わったのがきっかけです。それ以前はあまり学術にはフォーカスしていなかったんです。J-STAGEは大規模な開発だったので、開発を通して学術周りの独特の決まり事ですとかルールとかの知識を得ていったところがあります。

あと、大きかったのは開発だけではなく、運用の部分に携わったことです。サポートをするにあたってシステムを使うお客様を見ていることで、学協会を通じてその先の研究者との接点が深くなりました。

長谷川:その他にも学術向け製品を扱っていらっしゃいますね。

大澤:電子ジャーナルが公開されるまでにはいろいろな前工程、後工程があります。J-STAGEに関わっていく中で投稿審査システムや、大会演題システムなどの派生する学術関連サービスを手がけることとなりました。

PASREG(パスレグ)というのが演題登録システムで、大会プログラムを作成してWeb上で公開して、さらにサマリーを公開して見ていただくのがConfit(コンフィット)です。ConfitはWeb版とスマホアプリ版があり、iOSやAndroidデバイスで見られますので、分厚い冊子体の予稿集を抱えて移動しなくても済みます。

共通の研究者IDを作ろうという動きを目の当たりにした

長谷川:ここからはORCIDについてお伺いしたいと思います。どのようなきかっけでORCIDに関わられるようになったのでしょうか。

大澤:弊社として研究者向けのサービスを始めたのは最近のことで、論文検索Qrossというのが研究者向けサービスとして初めてのものです。そのあたりから研究者向けのサービスについてアンテナを張っていました。

サービスとか規格とかをいろいろウォッチしていた中で、2012年頃から大手の出版社や、たとえば、Editorial Manager(投稿審査システム)を運営しているAries社など、学術に携わるいろいろなステークホルダーが集まって研究者のIDをつくろうという動きが起こってきたというのを目の当たりにしました。

以前から出版社などではバラバラの研究者IDを使っていたのですが、「こういった問題が認識されていて、一つのIDを、共通のものを作ろうじゃないか」というムーブメントが興ってきている。これは今後のデファクトスタンダードになっていく動きでないかと感じました。何とかアトラスとしても関わりたいというのが一番のきっかけです。

ORCIDメンバー機関としての活動

長谷川:現在はORCIDのメンバー機関でいらっしゃいますが、具体的にはどのような活動をされているのですか。

大澤:具体的な活動としては、2つほどあります。ORCIDのメンバー機関(ORCID Premium Member)になっているのですが、一番大きいのはメンバーになることにより、ORCIDのAPIを使った開発ができるということです。既に2つほど開発を行っています。開発を通じて研究者にORCIDを便利に使っていただくツールを提供することで、ORCIDの普及の一助になればと思っています。

もう一つは、ORCIDは世界的な活動をしているわけですが、非営利ですし、いろいろな人の協力がないと活動ができないわけです。特に日本向けの普及活動、たとえば資料などは基本的に英語で作られていますので、その資料の翻訳を通じて日本向けの普及活動をしています。

長谷川:日本の組織でメンバーになっているのは、他にどのようなところなのでしょうか。

大澤:NII(国立情報学研究所)さんとJST(科学技術振興機構)さんですね。NIIさんからはORCIDのボードメンバーに武田英明先生が入っています。日本のアウトリーチミーティングはNIIさんが主催されました。大きなバックアップかなと思います。

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