研究の現場で聞いてみた!名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師、知財・技術移転グループ鈴木孝征特任助教

コラボリーの連載企画「研究の現場で聞いてみた!」、今回はNEDO Technology Commercialization Program で最優秀賞を受賞した “Photocathode Electron Soul” 名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師、知財・技術移転グループ鈴木孝征助教にお話をうかがいました。

大学発ベンチャーとして自らの研究を事業化し、「出口の見えない昨今の若手研究者のロールモデル(手本)になりたい」と語る両氏の研究に対する想いとは。若手研究者、ポスドク必見です。

前編は、西谷先生、鈴木特任助教それぞれの経歴、取り組まれてきた研究についてお話しいただきます。

NEDO Technology Commercialization Program とは
NEDO Technology Commercialization Program とは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による、国内の大学発起業家候補に対する起業支援プログラム。将来有望な科学技術シーズを保有する大学発起業家候補に対し、第一線のメンターによる事業計画作成支援や投資家へのプレゼンテーション研修、企業やベンチャーキャピタルとのネットワーク構築など、技術シーズ事業化の実現につなげるための第一歩を支援するプログラムです。

Photocathode Electron Soul
西谷智博特任講師(シンクロトロン光研究センター:代表)、鈴木孝征助教(知財・技術移転グループ)、岡田育夫特任教授(シンクロトロン光研究センター)によるチーム。既存性能を遥かに上回る電子源技術「半導体フォトカソード電子ビーム源」により電子ビームを用いた機器を刷新する研究「高性能電子ビーム生成装置と素子の販売事業」で NEDO TCP 最優秀賞を受賞

研究内容の詳細)
NEDO Technology Commercialization Program 最優秀賞受賞 西谷智博特任講師 特別インタビュー(名古屋大学)

名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師、知財・技術移転グループ鈴木孝征特任助教名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師、知財・技術移転グループ鈴木孝征特任助教
聞き手:株式会社ジー・サーチ新規事業開発室長 杉山 岳文
インタビュー 2015年4月28日

杉山:これまでのご経歴をお聞かせ下さい。

西谷:大学院を出てから日本原子力研究開発機構のポスドクを経て、理化学研究所のポスドクを5年間、その後で名古屋大学に着任しました。僕が他のポスドクの方と大きく違う点は、大学院の時からずっと研究テーマを変えずに来ていること。「電子源」は大学院のテーマだったので、23歳から今に至るまで延々と同じテーマを研究しています。

ポスドクは普通、受入側の募集内容に対応して研究テーマが少し、あるいは大幅に変わるものです。僕の電子源という研究分野は極めてマイナーな分野なので公募もほとんどないのですが、節目でいろんな出会いや引き合いがあって現在に至っています。

最初の原研は私が研究していた技術を使いたいと誘われました。ちょうど僕が名古屋大学でドクターを取ったタイミングです。次の理化学研究所は、当時、理研を兼務されていた日立製作所のフェロー、外村彰博士に興味を持っていただき、ポスドクに申請しました。名古屋大学に来るときは「任期が切れます、なんとかなりませんか」と僕のドクター審査員をしてくれた先生に話をしたところ、「今ならこういうのがあるから」と話をいただいて。

一般的にポスドクは「うちに来て何々をやってくれ」という形が多いのですが、僕の場合は同じテーマ、特に上司がいるわけでもない環境下で、「自分はこれを研究したい!」「こんなことを研究したら面白いはず!」と自ら発信し、「それは面白しろそうだからやってみろ」と呼んでいただいて、そこからまた自由に研究するというのが運よく続いています。

杉山:組織を移る際に不安はなかったですか?

西谷:いや、任期が切れる前はもう正直、精神的に病んでました(苦笑)。「最後の1年」というのは本当に。もうこの後はないかもしれないから、残された数カ月を研究に費やすのか、最後までポスト取得にあがいてみるのか。家族もいるからどうしよう、とか。任期切れが近づく年明け1月から2月くらいはノイローゼぎみに(笑)。たぶんこれは僕だけに限らず、任期が近づいたポスドク研究者はみな同じようになると思います。任期については「この人、任期がくるから研究できなくなる」という認識が周りの人にあまりなくて、本人しかそのシンドさが分からない。辛くて本当に病気になる方もいらっしゃいますし。

現在は、そういう状況とも「いい付き合い」をするようになったので大丈夫なのですが。踏ん切りが付いたというか。「もう、そんなこと考えてもしょうがない」と(笑)。

理研にいる5年間に結構いろんなことがありました。最初の基礎科学特別研究員の任期が終わる時に、「君の研究は面白いから続けなよ」とサポートいただきました。「理研に役に立つ」からではなくて、「その研究は面白い、凄い」から評価し、支えるという文化があったんです。

任期が終われば出て行くのですが、同時に「任期中に大きな成果を上げないといけない」といつも考えていました。日々の研究の中で、「自分の研究を自立させるためには何が必要なのか」。理研の雰囲気や文化を学んでいく過程で、「研究自体が世の中に価値があるものとして認められて、自分が研究をしてもいいという状況が出来なければだめなんだ」と思い始めたんです。

名古屋大学シンクロトロン光研究センターの西谷智博特任講師

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