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[ インタビュー・ライティング, 森 旭彦 ]

研究活動の生命線である科研費。毎年申請の時期になって、「どう書いたらいいのか分からない」と先輩研究者を訪ねたり、研究室の過去資料をひっくりかえし、インターネット上を走り回っても、不安はつきものです。

この連載では、科研費を申請する際のバイブルともなっている『科研費獲得の方法とコツ』(羊土社)の著者である児島将康氏が、最新版の科研費申請のコツを紹介します。申請書で、ついつい筆が止まってしまう箇所の対処法や、採択されるための秘訣、「なんとしても獲りたい!」の願いを叶えるための具体的な方法論を、研究者の目線に立って伝えていきます。

第2回は、科研費申請について平成26年度までの最新の資料を用いた傾向の分析を行い、その対策を紹介します。
< 第1回はこちら >

制度変更によって、基盤研究(C)の応募数は増加

◆科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(平成26年度 新規採択分)
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出典:日本学術振興会 科研費データより

 続いて基盤研究(C)を見ていきましょう。基盤研究(C)は、基盤研究の中でも中心的な位置づけになるものです。お読みいただいている方にも実感があるかと思いますが、若手研究者から教授クラスまでが一番多く応募するのが基盤研究(C)なのです。

基盤研究(C)は、前年度に比べ、平成26年度は応募件数、採択件数とも増加傾向にあります。応募件数を見てみると、前年度から1,458件増加の35,329件です。この背景にも、制度変更があります。22年度の公募から、若手研究(S・A・B)に受給回数制限が導入され、受給回数が最大2回までに制限されました。すなわち、若手研究者は採択されれば2回までしか若手研究を受給できないということです。

制度変更によって若手研究への受給資格を失ってしまった若手研究者は、基盤研究や挑戦的萌芽研究などに応募しなければなりません。この人数が割と多く、結果として基盤研究(C)の応募数は増加したのです。

挑戦的萌芽研究についても大幅に増加しています。応募件数は平成25年度から1,501件増加の15,366件へ、採択件数も368件増加の3,950件へと、ともに約10%増です。また、2〜3年ほど前は30%程度の高い採択率を誇っていましたが、現在は残念ながら応募者の数が多すぎて、やむなくだと思いますが25.7%まで減少しています。

若手研究者は、受給資格さえ合えば、若手研究へ

一方で、「若手研究(B)」は若手研究者からの応募がもっと増えてきてもいいはずなのに、減っているのです。応募件数は平成25年の2万件台から19,683件にまで下降しています。この前年の平成24年度からも減少傾向であったことから、科研費に応募する若手研究者そのものが減少しているのではと危惧しています。この傾向と歩みを合わせ、採択件数も減少し、おそらくその分が基盤研究(C)や挑戦的萌芽研究の方に吸収されているといえるでしょう。よって直近では、若手研究者で受給資格さえあれば、迷わず若手研究へ、という対策が有効かもしれません。

基盤研究(C)や挑戦的萌芽研究、若手研究(B)といったベーシックな種目は常に変動しています。基盤研究全般としては、やはり若手研究からの流入によって応募件数は徐々に増加しており、今後もその傾向は継続するでしょう。


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狙い目の新学術領域。領域が合えばぜひ応募を

◆科研費(補助金分・基金分)配分状況一覧(平成26年度 新規採択分)
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出典:日本学術振興会 科研費データより

 平成20年度に始まった研究種目「新学術領域研究」は、平成22年度には新規の領域数も増加し、今後も充実化してゆく予定です。また、平成25年度からは公募研究の2領域に応募できるようになっています。

平成26年度の応募は前年度から719件減少し、6,475件。採択も前年度から350件減少し、1,035件に。、採択率は19.3%から16.0%まで下降しています。新学術領域研究はその年に何件の新規領域がスタートするかによって公募の人数が変わってくるため、年によってかなりの変動幅があります。

採択され、「計画班」に入ることができれば、年間数千万円、5年間分の研究費を勝ち取ることができます。5年間でこの額が保証されているとなると、かなりの冒険ができるとともに、何よりも研究に余裕ができます。公募研究は2年間の研究期間に年間300~1,000万円の研究費がつきます。基盤研究(C)や若手研究(B)と比べても非常に大きな金額であるといえるでしょう。

領域に求められることを十分に満たしていれば採択される可能性が高い、新学術領域研究

どんな研究が採択されるのかというと、私の経験から言えば、新学術領域研究は、領域に求められることを自身の研究が十分に満たしていれば採択される可能性が高いです。言い方は乱暴かもしれませんが、「付け焼刃」で領域にこじつけたような書きかたをして申請してもほぼ採択されません。自身の研究がぴったり当てはまっていれば「これはいただき」と申請すべきです。

私の知り合いの、新学術領域研究によく採択される研究者のエピソードをご紹介しましょう。その人は敢えて「自分が今までやっていない領域」に、今やっている研究を上手く応用して採択されています。つまり“応用の妙”で魅せている研究者であるといえるでしょう。その領域の古参研究者から見たら、違うところからやって来た「新参者」は非常に新鮮です。そうした実験主義的な評価と期待から、採択されることもあるようです。

とはいえ繰り返しになりますが、自身の研究がぴったり領域と重なっていればまず申請、です。

【第3回】挑戦心を武器に~挑戦的萌芽研究の魅力とポイント に続きます

kojima_prof_s児島将康(こじま・まさやす)
淡路島生まれ。1988年宮崎医科大学大学院博士課程修了(医学博士)。
日本学術振興会特別研究員を経て、1993年国立循環器病センター研究所生化学部室員、1995年より同室長。2001年より久留米大学分子生命科学研究所遺伝情報研究部門教授。
研究テーマは未知の生理活性ペプチドの探索と機能解明。グレリンを中心とした摂食・代謝調節の研究。趣味は山登り、クラシック音楽、読書、映画鑑賞など。山は槍ヶ岳が一番好き。「研究は山登りであり、研究者は山に登らなければならない」と、思いませんか?クラシック音楽はもっぱら聴くだけ。CD購入枚数は年間500枚以上で、最近は完全に飽和状態。活字中毒。出張で時間があれば映画館へ。

著書:「科研費獲得の方法とコツ」(羊土社)kaken00_book科研費獲得の方法とコツ 改訂第3版〜実例とポイントでわかる申請書の書き方と応募戦略
単行本: 221ページ
出版社: 羊土社; 改訂第3版 (2013/8/9)
言語: 日本語
ISBN-10: 4758120439
ISBN-13: 978-4758120432
発売日: 2013/8/9
商品パッケージの寸法: 25.7 x 2 x 18.2 cm

 


森 旭彦(もり・あきひこ)
サイエンスとの様々な接点を描写してゆくライター。
理系ライターチーム『パスカル』のメンバーであり、研究者インタビューや、大学のメディア制作などに関わっている。

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