研究の現場で聞いてみた!リバネス 高橋代表取締役社長

世の中には研究助成プログラムがたくさんあります。科研費に代表される国や地方自治体・公共団体の助成金や委託研究、産業界の研究支援である民間助成団体の助成・奨励金、特定の疾病や難病に関する団体の助成金、様々な団体がそれぞれの想いで研究者を支援しています。

研究の現場で聞いてみた! の第3回は、多様な外部研究資金を紹介することで助成側と研究者をつなぐ架け橋となり、もっと「コラボレーション」を生み出すために「助成団体にも聞いてみた!」ということで企画してみました。リバネス研究費を展開する株式会社リバネスの高橋代表取締役社長のインタビュー(前編)です。

コラボリーインタビュー:リバネス高橋代表取締役社長・南場さん

株式会社リバネス 高橋 修一郎(代表取締役社長COO)、南場 敬志さん
聞き手:株式会社ジー・サーチ新規事業開発室長 杉山 岳文

「リバネス研究費」の誕生

杉山: 本日はよろしくお願いいたします。ではまず、リバネス研究費* の概要について教えて下さい。

高橋 修一郎(代表取締役社長COO): はい。まずリバネス研究費の成り立ちから話した方が分かりやすいと思います。リバネスがはじめて利益を出した年があって、「このお金を何に使おうか」という話になりました。「ボーナスにしようか」という話もありました。そんな時にリバネスメンバーの親友のポスドクが、数ヶ月後にアメリカに留学する予算を取った。「おめでとう!」なんて言っていましたが、アメリカに行くまでの数ヶ月間、予算の都合で飲まず食わずの状態に陥ってしまう、という話を聞いたのです。これまでの予算は終わってしまって、留学までの数ヶ月のつなぎの部分で給料がなくて生活が出来ない。彼は凄く優秀な研究者で、「彼が研究を続けないとしたら社会にとって損失だろう」とまで思える仲間。でも、大学にも教授にもそのつなぎ部分の給与を捻出することが出来ない、となって。

一方で僕らはちょっとした利益が手元にある。「彼を支援したら絶対に科学技術は進むよね」とも思う。リバネスには「科学技術の発展と地球貢献を実現する」という理念があります。それまで子供達の教育活動がメインでしたが、まさに自分と同世代の研究者が研究費の問題にぶつかっている。彼のような優秀な若手研究者を支援していったら、絶対に活躍をして次の成果を上げてくれるだろう。僕らに直接的に利益が戻ってくるかは分からないけど、「でも、そこはやるべき活動だよね」って。それで、僕が社内のみんなに「研究者支援でバラまく、というお金の使い方ってどうだろう」って話したのです。反応は凄く良くて、リバネスは研究者がやっている会社だから、全会一致で「やろう!」となったのです。それで、第一回のリバネス研究費を実施しました。

杉山: それはいつ頃の話ですか?

高橋: 2009年かな。その時、申請が数十件集まってきました。やっぱり内容が凄く面白くて。めちゃめちゃ熱い研究者が集まってきた。大学院生、ポスドクもいれば、助教や准教授などいわゆる研究者番号を持って科研費を貰っている教員、中には理研のグループリーダーも。共通するのは、今まさにラボで手を動かしている若い研究者であること。そして、「自分で何かをやりたい!」という思いのあるアクティブな研究者であることです。それが嬉しくて頑張っていっぱい採択しました(笑)。

そんな話をいろんなところで仲間の社長さんとかに話をしていたら、「それは面白いね」、「どういうテーマが来たの?」、「どういう研究者がいるの?」と興味を持ってもらえて。「自社のテーマで一緒にやれるような研究者いないかな」、「いいですよ、それならリバネスが声をかけるから集まってきた研究者とマッチングしますから」と、話がどんどん広がって。その結果、第26回まで続いてきた、というのが経緯です。だから最初は、「仲間の研究者の研究を進めたい」という研究者っぽいシンパシーから始めた活動で、この思いへの共感を軸に仲間の企業を巻き込んでビジネス化して継続しているんです。

企業とのコラボレーション

コラボリーインタビュー:リバネス高橋社長

杉山: 企業のスポンサーが付いたのは何回目からですか?

高橋: 2回目からですね。

杉山: もう嬉しくて話しまわったのですか?

高橋: もう自慢して回りました(笑)。もちろん、研究費をただ配る「足長おじさん」になったらビジネスとして継続が難しい。一方で深い問題意識として、「若いうちから社会や産業界とコラボレーションしながら研究をする機会をどう作っていくか」って、凄く大事だと思うのです。今、コミュニケーション能力など、研究者にはスキル面の課題があると言われています。しかしそれは教育や研究経験のプロセスで改善できるものがほとんどだと思います。ただ、今もそうだと思いますが僕の時代の研究現場というのは、教授が頑張って予算をとってきてくれて、その中で教授と話し合ってテーマを決めて研究をしていくというものでした。これはこれで大事な一方で、産業界とのつながりを生み出すのは、なかなか経験出来なかった。

杉山: なるほど。

高橋: だから「自分でテーマを考えて、コラボレーションする場を生み出す」、その経験が将来的には研究者の競争力になるし、企業にとっても「アクティブな研究者とつながる」ことは大きい価値だろうと。そういう意味でリバネス研究費は新しい「産学連携の形」だと僕は思っているのです。

今の産学連携はどうしても知的財産創出に力点が置かれているから、特許売買ゲームになったり、悪い場合は訴訟になったりします。ただ、アカデミアの、研究活動自体の本来の価値というのは「仮説を作る」ところ、Questionを持つところにあるのだと思います。企業にとってアカデミアとコンタクトする本質的価値は、そこにある様々な仮説にリーチできることだと思うのです。発明などの創作の結果は分かりやすいですが、研究という創作活動の最も上流にリーチ出来ることが大切なのです。加えて、組む相手は若い研究者をお勧めします。若い研究者はこれから未来、大発見をするかもしれないですし、関わり方として共同研究だけでなくリクルーティングという可能性もある。その層は学生だったりポスドクだったりするから、国からの支援も行き渡らない人材です。その層を支援していこう、というのが僕の考えですね。

なお大事なこととして、企業側にはリバネス研究費の成果について知財を主張しないでください、という話をしています。知財を主張するならもう少し大きい金額でしっかり共同研究をしたほうが良いと思うのです。せっかく少額の50万円という金額なので、何をするかは研究者に任せて欲しい。小額の資金を多くの研究者に渡し、温めてきたアイデアを検証する機会を作る。束ねて一箇所にドーンと渡すよりも多様で面白い成果が出るじゃないですか。出来るだけ多くのアクティブな研究者に対してコラボレーションの機会を作っていくというのが、このリバネス研究費の価値と思っています。スポンサーにとっても、アクティブな研究者のアイデアの検証をサポートする過程で仲良くなり、その後共に様々な活動をするきっかけにもなります。

杉山: 若手、ポスドクと話がでましたが、リバネス研究費の採択で一番多い年齢層は?

高橋: 今は40歳以下というレギュレーションでやっていて、採択者で一番若いのは修士の1年生。学部生はまだ採択したことがないです。博士の学生とポスドク、助教の立場の方で全体の8割くらいを占めています。25から35歳くらいが一番多いです。

(前編2に続きます)